306 305つづき ここまでの流れだと、私が生き霊になってMちゃんに取り憑いたのかと思うかも知れませんが、私は日を追うごとに彼女の小悪魔的な性格に嫌気がさしてきたのです。Mちゃんと会う頻度は徐々に少なくなっていき、自分からは連絡を取らなくなりました。しかし、Mちゃんからは一定の頻度で連絡があり、私は少し彼女のことを面倒くさくなっている自分に気づき、もう彼女のことは何とも思っていないことを再認識したのです。 そうこうしているうちに、きちんとした付き合いの彼女が出来て、私はその彼女の存在をMちゃんには敢えて伝えずに、メールのやり取りだけが続いていました。 そしてその年のゴールデンウィークに、その新しい彼女と温泉に行くことになり、温泉地へと車を走らせると、その行動をまるで見ていたかのように、Mちゃんから突然電話がかかってきたのです。 つづく 主2021/06/25 20:264FkqoEEBMI
307 306つづき 私は電話をシカトすることに決めたのですが、鬼のように着信が来るので電源を落とすことにしました。 温泉地へ到着して、恐る恐る携帯の電源を入れると、そこにはおびただしい数のメールが。 私はメールを開封せずに、一日だけ彼女からの連絡を遮断することに決めたのです。そして、地元に帰ったら彼女の存在をきちんと伝えて、連絡を取るのもやめることを決心しました。 再び携帯の電源を落とした、私は長時間の運転に疲れたので、温泉にはすぐに入らずに、部屋で少し体を休ませることにしました。 同行していた彼女が、先に風呂に行きたいというので、彼女が風呂に向かった後、一人でテレビを観ていました。 つづく 主2021/06/25 20:334FkqoEEBMI
310 307つづき その間、30分ぐらいテレビを観ていた私は備え付けの冷蔵庫から瓶ビールを一本取り出し、ちびちびと飲んでいました。 これから書くことは、紛れもなく私が体験したことで、いまだに自分でもそれが何だったのか、どうしてそんなことが起こったのか理解出来ず、今日に至るまでそんな経験はこの一度きりです…。 グラスに一杯ぐらい飲んだ辺りで、鍵の開く音と共に部屋のドアか開いたので、彼女が風呂から上がって来たと思い背を向けたまま「お風呂どうだった?立派だった?」 こう問いかけると彼女から「凄い良いお風呂だったよ〜入りに行かないの?」こう返事が返ってきたのですが、なんか違和感を感じた私は振り返り彼女を見上げました。 つづく 主2021/06/25 20:444FkqoEEBMI
311 310つづき 彼女を見上げた私は、驚きのあまり声を上げそうになりました。 そうです、そこに居たのは彼女ではなくMちゃんでした…。 私はあまりの事に一瞬混乱しましたが、すぐにこれは「彼女とMちゃんが実は知り合いで、私に一泡ふかせようとしたのか?」もしくは「ロンドンハーツのスティンガーのような番組か何か?」そんな考えがあたまをよぎるぐらいそこに居たのは、紛れもなくMちゃんそのものだったのです。 過去にMちゃんと一緒に、地元のスーパー銭湯に何回か行ったとき、彼女は必ずハンドタオルを捻り鉢巻にして頭に巻くのですが、そのスタイルもそのままで、浴衣まで着ていてさらに普通に「お風呂行かないの?早く行ったほうが良いよ」と話しかけてくるのです。 私は内心「しかし、良くここまで仕掛けの込んだことをよくやるな…」と思い、半ば呆れに近い気分になったのですが、「いや、ちょっと待て。これはやはりおかしい。冷静になろう」こう思い、一度Mから目を離しマンガのように目を擦りました。 つづく 主2021/06/25 22:304FkqoEEBMI
312 311つづき Mがいる地元から温泉地まで、距離は約260Km。車で高速を使っても時間にして車で訳4時間超。 ここにいるはずは絶対にない。 そう思いまたMを再度見ると… そこにはもうMはいませんでした。 程なくして、同行の彼女が戻ってきて訳が分からずぼーっとしている私を不思議そうに見ていたのを覚えています。 私はそんなものを見たなど彼女に言えるわけもなく、ただただ怖い気分でその夜を過ごしました。 地元に戻って、またMから電話が鳴り私は意を決して出ました。 Mはかなりの剣幕で「昨日何やってたの?私何回も電話したし、どうしてメールを返さないの?」こう捲し立てられました。 私は彼女が出来たことを言うつもりでしたが、咄嗟に「言わない方がいい」と判断し、昨日は地方から親戚がやってきて接待をしていた、と事実を伝えませんでした。 はっきりとした理由があった訳では無いのですが、とにかくこれ以上刺激をしない方が良い‥そう判断してその日は電話を切りました。 つづく 主2021/06/25 22:474FkqoEEBMI
313 312つづき Mはとてもプライドが高く、欲という欲は全てに旺盛な女でしたが、今までMちゃんMちゃんと追っかけていた私が急に疎遠な態度を取ることに、明らかに動揺しているようでした。 私はまさか温泉地であなたを見たとも言えるはずもなく、彼女との距離を更に置くようになりました。 それからひと月ほど経ち、またMから電話が鳴ったとき、すでに私はある種の恐れみたいなものを感じながら電話に出ました。 「最近、全然連絡くれないね」こう切り出され、他愛もない話を数分して通話を終えたそれ以降、彼女からの連絡は来なくなりました。 そして、今日に至るまで彼女とは連絡を取っていません。 数年後、人から聞いた話では、MはOLを辞め東京に行き、遅咲きのホステスデビューしてかなりの売り上げを出している、と聞きました。 つづく 主2021/06/25 23:124FkqoEEBMI
314 313つづき 開業歯科医の娘で、あれだけ水商売を馬鹿にしていたMですが、遊び好き男好きのMにホステスはまさに天職だと思いました。 しかし、私が見たMは一体何だったのか…。 おそらく彼女の強い執着にも似た念が、私の脳に届きMの幻影を見せた‥…。そのように思っています。 おどろおどろしい話でもなく、拙く長い話に辟易されたかもしれませんが、私にとってはこの体験が最も恐ろしいものだったことに違いはありません。 主2021/06/25 23:134FkqoEEBMI