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左翼は偽善者、保守派は正義

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だよね?

062

国会に小選挙区法案が上程された。
衆院で江崎真澄自治相が提案理由の説明に当たって失言があったとかどうとかが導火線となって 国会は乱れ審議がストップしてしまう。この間、衆院議員選挙区割り委員会に「区割り案」が諮問される。いよいよ審議は荒れに荒れた。
あまりの激しさに田中首相も一時ホコをおさめたかに見えた。
私は5月15日、大平を私邸に訪ねた。
「田中はまだ法案は断念してませんね」
「君のいう通りだ。おれは党三役、両院議長に法案をゆだね 国会で通るような案に改める。『もっと法案の趣旨を国民にPRして そのうち中央突破を考えろ』と田中に話してある。田中も納得して いまその考えで進んでいる」
といった。
私は別のところから田中の考えを聞いていたので 果たして大平のいう通り進むだろうかと危ぶんだ。
翌日になって大平の考えが正しいことが判った。政府は両院議長の斡旋で公選法改正案の提出を断念した。区割り委員会はしばらくして廃止と決まった。
5月22日、大平に会うと
「今日、田中と会った。おれが小選挙区法案に慎重なことを知っていて『君はいい身分だな』と皮肉をいった」という。

063

そういいつつ
「田中はあと一年半だ。おれはまだ力がない、福田も同じだ」
とつぶやくようにいった。
総理が断固たる決意で重要法案を提出しながら途中で挫折したような場合、その政権の前途がおかしくなるのは当然のことだ。田中政権はこれから下り坂を歩まねばならない。あとは退陣の時期の測定だけとなる。
この頃 “田中に近い筋” は私に
「角栄がいちばん信用しているのは亀岡高夫代議士で、ついで金丸信、小沢辰男、竹下登の順だ。山下元利はこれから育てようとしている一人だ。二階堂は心の中で軽蔑し切っている、絶対に田中を裏切らないことだけを信じて使っているだけだ」
と教えてくれた。
私はこのとき、若き日の田中角栄と二階堂進が互いに衆院建設委員会の理事として「タグマッチを組み」、やがて建設族のボスとして成長してきた過程をだれかに教えられたことを思い出した。田中の二階堂に対する評価はもっと高いだろうと考えた。

064

会期延長をめぐる与野党の攻防が落着し国会が再開されることになった5月25日、船田中前衆院議長の叙勲祝賀パーティーがさるホテルで行なわれた。現議長として中村梅吉はその席でお祝いのスピーチを述べた。
「野党側からは収拾の条件として自民党が強行採決をするなという要求があったが……自民党にも注意し慎重に処理すると答えて、ちょいと誤魔化しておきました」
すぐにこの発言が野党議員の耳に入った。
「野党を誤魔化したとは何ごとか」と野党は再び審議拒否に出る構えを見せた。中村は親分の中曽根通産相に会い
「事態が収まるには私が辞任するほかはありません」と申し出た。
後任議長として選ばれたのは大平派の前尾繁三郎であった。
続いて5月26日、増原恵吉防衛庁長官の発言が物議をかもすことになった。増原は警察予備隊本部長官、保安庁・防衛庁次長を歴任してきた国防のプロ、防衛庁長官も佐藤内閣に続き二度目であった。増原は「当面の防衛問題」について天皇に御進講した。このあと増原は いかにも官僚出身らしい几帳面な しかも明治世代の人間らしく 恐懼感激この上もないという面持ちと態度で防衛庁担当の記者団と会見した。

065

「私が四次防や近隣諸国の軍事力などについてご説明申し上げたところ、陛下は『近隣諸国にくらべ日本の自衛力がそんなに大きいとは思えない。それがなぜ国会で問題になっているのか』とお訊ねになられました。
私が『お仰せのとおりです。わが国は専守防衛で野党から批判されるようなものではございません』とお答えすると『防衛問題は難しいだろうが国の守りは大事である。旧軍の悪いところは真似せず良いところをとりいれてしっかりやって欲しい』と申され 国会での防衛二法案の審議を暗に勇気づけられました」
この談話は各紙の箱ダネであつかわれた。これを社共両党は重大視した。
「増原発言は自衛隊増強、防衛力拡大を狙って天皇を政治的に利用しようとするものだ」
「政治に不介入の天皇に防衛力のご進講をすること自体に疑義がある」
田中首相は思わず苦い表情になった。
― 陛下がはたして増原君にそのようなことをいったのかどうか。憲法上の問題、陛下御自身のことに波及する。
「これは大変な問題だ」と田中は呻くようにいった。二階堂官房長官はすぐに増原を呼んだ。田中のこわばった表情を眼にして、増原も即座に辞任する決意を固めざるをえなかった。

066

昭和48年5月、私に思いがけない役回りがきた。
増原恵吉防衛庁長官が天皇陛下への内奏の内容を漏らしたことの責任を問われ辞任に追い込まれた。田中角栄首相から呼び出しがあって首相官邸に出向くと橋本幹事長、二階堂官房長官らがそろっていた。田中首相がこう切り出した。
「山中君、防衛庁長官をやってくれないかね」
「どういう風の吹き回しですか。私はあなたを首相に推したことはありませんよ」
「わかってる。わかってるけど人がおらんのだ」
「いるでしょう」
「ウソじゃない。ほら、これをみろよ」
首相たる人が本来してはいけないはずだが、そこは角さんらしいところで候補者十六人のリストをみせてくれた。十五人の名前が墨で消され 一人だけ残っている。それが私だった。
「なあ 君しかいないんだよ」
「あなたがこういう機密をさらけだしてまで言うならわかりました。しかし僕は自衛隊のことはよく知りませんよ」
「それで構わない。二年間で三人の防衛庁長官が辞任した。だから今度はどんなことがあっても引きずりおろされないような奴を選びたい。山中君なら野党から不信任が出ようとびくともせんだろう」

067

「まさかあなたの内閣に入るとは思わなかったな」
「いや、そういう人の方がいいんだよ」
そういいながら角さんは「いいだろう」と党三役に念を押すと三役もうなずいた。
そこで私の方から切り出した。「今年の秋に内閣改造があれば、もうわずかな任期しかありません。これでは防衛庁長官の職務は果たせないので『山中だけは改造があっても留任させる』という約束をしていただきたい」
「いや改造はせんよ、せんよ。おれが約束する」
「あなたがしないといってもせざるを得ない場合もある。『火消しをやれ』と言われて終わったら帰っていいというのでは困る」
「わかった、わかった。自今、防衛庁長官は特別職だ。あんたは永久防衛庁長官だ」。こういうところはいかにも角さんだなと思った。
49年10月、私は渡米しシュレジンジャー国防長官と会談した。当時、シュレジンジャー氏は気難しい人で面会時間は15分単位が原則と言われていたが、私との会談は1時間45分に及んだ。「ソ連をどうみるか」話が弾んだからだ。私が「ソ連は自分のものは自分のもの、あなたのものも自分のものという国だ」と言ったらシュレジンジャー氏は大笑いをして 一気に語り合った。

068

選挙法改正法案で一度ガタがきた田中内閣は これを機におかしくなりはじめた。衆院は会期延長のための単独審議強行で軌道を外してしまう。この正常化の過程で中村衆院議長が辞意表明に追いこまれ、天皇陛下に対する内奏問題で増原防衛庁長官が辞任するなどごたごたが続いた。議長の後任は前尾繁三郎、防衛庁長官の後任は山中貞則が決まって騒ぎは一応収まった。
5月31日、大平に会うと
「角栄は田中伊三次を後任議長に考えていたが 新聞に前尾の名前が出てしまったので否定すると大平が困ると思い前尾に決めた。『これは君への貸しだぞ』と田中にいわれた」
と話し、前尾のことで田中に借りを負うなど心外だといわんばかりの口吻だった。
6月初旬、私が本部へ参拝したあと大平に会うと「神参りか」と大いに関心をもって私の言葉を促した。
「私は『急がんでいい』といわれた。これはあなたにも関係があることだ」
というと大平は
「田中内閣はどうなるのか」
と聞く。
「そのことは伺わなかった」
「それを聞かねばなんにもならん」
「そんなことは聞かなくても判ってますよ、この内閣は世論の中で袋だたきになって潰れてしまうでしょう」
私は即座に言い切った。

069

6月16日、大平から連絡があり宏池会に出ると
「佐藤前首相の使いが来て『大平君が幹事長になったらどうか』といってきた。このままだと田中内閣は危ない。大平が田中と協力したら切り抜けられるというのだ。返事は留保した、どう思うか」
大平は私に意見を求めた。突然のことだし出所が佐藤だというので「もう大平も幹事長になってもいいころだ。だが大平は田中と何か約束して幹事長にはならんといっていたじゃないか」と心中思いつつ
「考えてみましょう」
と返事した。私はその足で荒川へ参拝して御届けをした。
「それは危ない、泥を全部かぶせられてしまう。引き受けるなら宏池会が蔵相と幹事長を二つとも引き受けよ」
といわれた。私は〈大平がなるなら蔵相だ〉と思った。
翌17日、大平にこの旨を述べると
「だれを幹事長にするか」
という。
「鈴木善幸だろう」
「それでよいのか」
私はおやっと思った。鈴木に対する大平の評価をきいて私は「一晩考える」といってまた家にもち帰った。考えた末
「田中内閣は改造せずにゆくべきだ。出来なければ福田外相、大平蔵相でゆけばよい。幹事長候補が宏池会になければ田中派でだれかなればよい」
という結論になった。

070

48年も夏にかわると東京都議会議員選挙をひかえていた。一自治体の議員の選挙とはいいながら 東京が首都であるという性格上 マスコミはこれを大きくとりあげた。
それにこの選挙は49年の参議院選挙の前哨戦的な意味あいをもっていた。
田中首相も興奮気味に都議選の帰趨に注目していた。自民党は現有51議席で公認61名を立てた。この公認候補を党本部に呼んで証書を渡すときに 田中は
「こんなに年寄りが多くて勝てるか」と大変に機嫌が悪かった。
田中は自民党都連政調会長の小坂徳三郎を呼んだ。小坂は今度の都議選では実質的な指揮官という立場にある。将来の総裁候補ともくされている人材で田中も多分に期待をかけている。
その顔を凝視しながら田中は
「都議選しっかり頼むよ。絶対に負けてはならん」といった。しかし小坂は逆にこのように答えたものである。
「総理、うまくいって37、8名当選、そう思ってもらいたいものです」
もちろん小坂としては闘い方によっては現有議席保持とはいかないまでも2、3名の減でくいとめるという自信をもっていた。
この自民党に対して野党側の攻勢もすさまじいものがあった。

071

社会党は先の都議選で第一党から第三党に転落しただけに挽回に必死で、現有20議席に対して44名という大量の公認候補を押し立てた。ことに共産党に美濃部与党第一党の地位を奪われてはならないという意気込みが強かった。
公明党は25議席に対して27名公認で無理をしない作戦であった。
共産党は現有18議席に対して41名の公認をたてた。
「必ず30名を突破してみせる。議席の倍増が最低の目標である」という強気の姿勢と戦法であった。
そのようなところからマスコミがこの都議選に与えたキャッチ・フレーズは「自共対決」であった。
小坂は橋本幹事長と相談しながら新しい戦術をとった。それは共産党に対抗するための広報宣伝であった。自民党は自由新報その他のポスター、ビラなどを九千万枚都内にばらまいた。いままでの自民党ならば一千万枚程度でとまるところを十倍に近いほどの大量散布といえた。
それでもなお共産党は赤旗その他を含めて三億枚を都民にばらまいた。
しかし小坂の作戦は確実に成功をおさめた。7月8日投票の結果は

自民党51(―)、公明党25(―)、共産党24(+6)、社会党20(―)、民社党2(▲2)

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