にゃにゃね！

　鈍い音がした。小林がバットの根元ではじき返した小フライが、二遊間後方へ上がった。前進守備の遊撃手の頭上を越えて、中前へポトリと落ちた。３点リードの５回１死満塁。加賀のインハイ直球を詰まりながらも中前に運ぶ適時打。「何とか点を取りたかった場面だったので、打てて良かった」と控えめに振り返った。
　今季、満塁の場面では３犠飛も、１６打席で安打はゼロ。１本出るまで長かった。ラッキーボーイと称された３月のＷＢＣをほうふつとさせる一打に、畠までもがタイムリーで続き、この回４安打３得点。由伸監督は「何だっけ？　前に飛ばさないと何も起こらないのでね」とトボけたが、幸運を運んできたのは間違いない。
　打率１割台と低調な日々が続いてきたが、夏場に２割台に乗せると、８月３０日の広島戦（東京Ｄ）で今季１号。後半戦は打点を挙げた６戦全て勝利と、バットの貢献度も上がってきた。練習ではバットに５００グラム前後の重りを付けて振り込み、スイングスピードを磨いた。「強い打球をしっかりと打って貢献できるように」。詰まった打球がヒットゾーンに飛んだのもその成果だった。

　周囲も“変身”を認めている。ある日の東京Ｄでの試合前。投手陣のフリー打撃を終えたマイコラスから、声を掛けられた。「最近、打撃が良くなってきたね。頼もしいよ」。さりげない一言で、肩の力も抜けた。
　守っても頭脳的な配球でヤマ場をしのいだ。畠が２安打で１死二、三塁のピンチを背負った６回は、筒香を直球で三ゴロ、ロペスには一転チェンジアップを多投し、最後は直球で空振り三振。試合後、小林は自身の一打の振り返りはほどほどに、「すごく良い投球をしてくれたので、頼もしかった。いろんな球種を持っていてすごく能力が高い」と、ルーキーへの賛辞を惜しまなかった。が、大一番で、女房役の働きも負けじと光っていた。

　阪神のレジェンドエースと言えば村山実さん。さすがに現役時代は見たことないけど、「ザトペック投法」は知っている。
　で、ザトペックとは何ぞや？　こちらも伝説的なアスリートである。１９５２年ヘルシンキ五輪で空前絶後の長距離３冠（男子５０００メートル、１万メートル、マラソン）に輝いた。
　全身から煙をはき出しているようなダイナミックな投球。人間機関車との異名をとった長距離ランナーみたい…からの「ザトペック投法」である。
　タイプは違うと思うけど、畠もマラソン選手を連想させる。スリムな体を目いっぱい使って投げるフォームとたまに見せる苦しげな表情。このへんが見てる者を爽快な、そして切ない気持ちにさせるんだろうな。
　そんなわけでルーキー右腕が投打に奮闘した本日の試合。この人のピッチングをＣＳの大舞台で見たくてたまりません。
　５回１死一、二塁のピンチ。何とか切り抜けベンチに戻った時だった。小林が何やら話しかける。すると青息吐息だった畠の表情がパッと明るくなった。
　世代交代が進まないと言われがちな巨人だけど、そんなことはない。この二人を見ていると、確実に新しい風が吹いてきていると断言できます。

　畠に何をささやいたのか分からないが、小林が直後に放ったダメ押し打。グッときた。内野のアタマをギリギリで越える渋〜い打球を見て、誰もがアレを思い出したんじゃないかな。
　「ＷＢＣだ。世界のコバヤシが帰ってきた」―。あの日本中を熱くさせた３月の戦い。ところが、ペナントに入ると魔法の時間は終わっていた。
　「コバヤシの飛行機のチケットは破綻した旅行会社のもので、実はまだ帰国していない。日本にいるのは別人だ」などと、ひどいことを言われる始末。
　でも土壇場で見せてくれたね。「世界の」改め「セ界のコバちゃん」。ただ野手がポテンで投手がライナーって、普通は逆でしょう。

　４回２死、一時同点となる２号ソロを左翼に放った。低めの直球を捉え「しっかりと打ち返すことができました」。球団通算１万号本塁打まで、あと２本となった。

で、今日、巨人は勝ったの？

読売のごり押しでＷＢＣだって正捕手だっただけ
ザコキャッチャーｗｗｗ

小林を育てたかったら、ファンはチヤホヤするな