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【ペン専用】SUPERNOVA(旧 超新星)★62
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ほどほどに
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「川島さんが80歳の誕生日を迎えたようですが、なにもしないのですか?」と訊かれたとき、保利は、はっとなった。
慌てて保利は、交友クラブにいた川島に電話をかけた。
「副総裁、水臭いですたい」と、保利は佐賀弁を丸出しにした。
「ひとこと、言って下されば、総理をはじめ、私たちでお祝いしましたのに」
「いや、有り難う」といってから、川島は例によって
「長生きのためには、なにもせんほうがいいんでね。おかまいなく」と答えた。
― いまさら、佐藤たち……岸、福田、保利たちに祝ってもらわんほうがいい。お祝いを口実に、情にからんで『佐藤のあとは福田にしたい。よろしく』などといわれては、阿呆らしい。
もっとも川島は、福田後継反対ではあっても、それを露骨には口にしなかった。かつて大野伴睦が副総裁だったころ、反佐藤感情をむき出しにして
「おれの眼の黒いうちは、栄作には天下を渡さん」
といったことがあるが、そうした言動は川島のとらないところである。
自らほとけの正次郎というように、みたところ円満、柔和である。だからこそ「おとぼけ正次郎」と、人はいうのだった。どちらにしても、やはりそのしんは「剃刀正次郎」であった。
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8月のなかば― 三木派が、秋の総裁公選にそなえ、三木擁立の声をあげ、前尾が研修会で出馬の姿勢をみせ、騒然となってきたあたりで、ようやく川島はおみこしをあげた。
「政局について、君の意見を聞きたいんだ」
そんな電話を、川島は交友クラブから、幹事長の田中にかけた。
「君の都合さえよければ、これから、党本部にいってもいい」
川島は、決して大物ぶらない。80歳の老齢を思わせない。至って腰が軽い。平河町の党本部に出向くと、田中と総裁室で顔を合わせた。その席で川島は、田中に訊ねた。
「いったい、佐藤首相の心境は、どうなんだね?三期で引退する気なのか、それとも四選に出る肚かね?」
「……いや、そのことなんだかね」と、田中も首をひねった。
「ぼくにも、測りかねる。この春ごろの様子では、三期でやめそうな気配があったんだが、最近はどうやら、四選出馬に傾いとるんじゃないだろうか」
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8月のなかば― 三木派が、秋の総裁公選にそなえ、三木擁立の声をあげ、前尾が研修会で出馬の姿勢をみせ、騒然となってきたあたりで、ようやく川島はおみこしをあげた。
「政局について、君の意見を聞きたいんだ」
そんな電話を、川島は交友クラブから、幹事長の田中にかけた。
「君の都合さえよければ、これから、党本部にいってもいい」
川島は、決して大物ぶらない。80歳の老齢を思わせない。至って腰が軽い。平河町の党本部に出向くと、田中と総裁室で顔を合わせた。その席で川島は、田中に訊ねた。
「いったい、佐藤首相の心境は、どうなんだね?三期で引退する気なのか、それとも四選に出る肚かね?」
「……いや、そのことなんだかね」と、田中も首をひねった。
「ぼくにも、測りかねる。この春ごろの様子では、三期でやめそうな気配があったんだが、最近はどうやら、四選出馬に傾いとるんじゃないだろうか」
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田中にしても、佐藤の肚はただ推量するに過ぎない。佐藤派の代貸しとして幹事長の椅子に坐ってはいても、この1月、佐藤は田中をそのポストから外そうとしたくらいだから、田中は疎外された形になっている。
佐藤は、機密なことは、もっぱら福田、保利に諮って、田中にはあずからせない。田中の方も一歩退いた格好で、佐藤に近づくのを差し控えている。そねあたりのことは、川島にもわかっていることだ。
「まあ、佐藤の肚のうちがどうあるかは別として……」と、川島は意見を述べはじめた。
どんな重大なことを話していても、川島副総裁は、決して気色ばまない。表情はいつも、おだやかな笑いをふくんでいる。いまの場合は、ややそれが、皮肉なかげをおびていた。
「ぼくはね、佐藤首相のために、三期引退がよいか、四選出馬がよいか……を論じようとは思っていない。そんなことは、どちらでもいいんだ」
ある意味で非情なことを、川島はいいはじめた。
「われわれにとって……」と、川島はいった。われわれというのは、川島と田中という意味である。二人は、党人としての提携関係にある。
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田中にしても、佐藤の肚はただ推量するに過ぎない。佐藤派の代貸しとして幹事長の椅子に坐ってはいても、この1月、佐藤は田中をそのポストから外そうとしたくらいだから、田中は疎外された形になっている。
佐藤は、機密なことは、もっぱら福田、保利に諮って、田中にはあずからせない。田中の方も一歩退いた格好で、佐藤に近づくのを差し控えている。そねあたりのことは、川島にもわかっていることだ。
「まあ、佐藤の肚のうちがどうあるかは別として……」と、川島は意見を述べはじめた。
どんな重大なことを話していても、川島副総裁は、決して気色ばまない。表情はいつも、おだやかな笑いをふくんでいる。いまの場合は、ややそれが、皮肉なかげをおびていた。
「ぼくはね、佐藤首相のために、三期引退がよいか、四選出馬がよいか……を論じようとは思っていない。そんなことは、どちらでもいいんだ」
ある意味で非情なことを、川島はいいはじめた。
「われわれにとって……」と、川島はいった。われわれというのは、川島と田中という意味である。二人は、党人としての提携関係にある。
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チンコ
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まんこ
897
オナニー
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とっくに帰った
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