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【ペン専用】SUPERNOVA(旧 超新星)★62

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ほどほどに

960

― 中間派全部を佐藤四選支持にとりまとめる。
というのが、川島のねらいだった。
そのころ中間派― 総裁候補をもたない派閥は、川島派をはじめ中曽根康弘、園田直、船田中、村上勇、石井光次郎と、六派を数えていた。
中曽根派は三十五名、村上派は十名といったように大小はあったが、中間派がすべて連合すれば百名程度の人数にはなる。
― 中間派のひとつひとつは弱小派閥で力はないにしても、合すれば、衆議院自民党三百名の三分の一に相当する大勢力だ。
― これが佐藤支持一本にまとまれば、佐藤の票は、その派五十九名、福田派三十四名を加え、二百名にちかい。過半数をはるかに越え、三分の二に至る。
― そうなると、三木、前尾たちが、いくら佐藤退陣を狙い、反抗しても、佐藤はらくらくと四選を獲得できる。
と、川島は算盤を弾いていた。そんな計算を腹中において、川島は船田を訪ねたのである。
「ご承知のように、ぼくは佐藤首相の四選を支持する……と、札幌でしゃべった。それについて、君の見解を訊きたいんだ」
船田が佐藤を、そんなに快く思っていないことは、川島と同じだった。
40年、日韓条約の批准を与党が強行突破したとき― 船田は衆議院議長だった。

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― 中間派全部を佐藤四選支持にとりまとめる。
というのが、川島のねらいだった。
そのころ中間派― 総裁候補をもたない派閥は、川島派をはじめ中曽根康弘、園田直、船田中、村上勇、石井光次郎と、六派を数えていた。
中曽根派は三十五名、村上派は十名といったように大小はあったが、中間派がすべて連合すれば百名程度の人数にはなる。
― 中間派のひとつひとつは弱小派閥で力はないにしても、合すれば、衆議院自民党三百名の三分の一に相当する大勢力だ。
― これが佐藤支持一本にまとまれば、佐藤の票は、その派五十九名、福田派三十四名を加え、二百名にちかい。過半数をはるかに越え、三分の二に至る。
― そうなると、三木、前尾たちが、いくら佐藤退陣を狙い、反抗しても、佐藤はらくらくと四選を獲得できる。
と、川島は算盤を弾いていた。そんな計算を腹中において、川島は船田を訪ねたのである。
「ご承知のように、ぼくは佐藤首相の四選を支持する……と、札幌でしゃべった。それについて、君の見解を訊きたいんだ」
船田が佐藤を、そんなに快く思っていないことは、川島と同じだった。
40年、日韓条約の批准を与党が強行突破したとき― 船田は衆議院議長だった。

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そのあと、野党が審議拒否の挙に出た。議長が責任をとって辞任するならば、野党も折れて出る形勢になった。強行採決連発のときであったので、佐藤も結局は船田議長の辞任を認めた。その後、船田は時間をおいて再び衆議院議長に復帰したが、佐藤の非情さには反感を感じ、心情的には福田に傾いていた。
― 佐藤首相が引退するときは、後継政権は福田。
船田が福田を後継に推していたのは、船田その人の考え方や人格によっていた。船田も、岸信介、石井光次郎、福田たちと同じく、政界の一部からは、ときによって、「台湾ロビー」「韓国ロビー」と呼ばれることがあった。日中国交正常化については、後ろ向きだった。
この同系列の思想ゆえに、船田は、福田を支持していたのである。
それに、船田はもともと、大野伴睦派の代貸しでありながら、一時期、官僚生活を経、学校経営にもあたっていただけに、あくまで堅実、安定型の人柄である。
といったところからも、福田支持であった。
その船田は
― 佐藤首相は、三期で引退して福田に禅譲したらどうなのか。
という気持ちがつよかった。
そのあたりの船田の心情は、とうに川島にも読めている。

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そのあと、野党が審議拒否の挙に出た。議長が責任をとって辞任するならば、野党も折れて出る形勢になった。強行採決連発のときであったので、佐藤も結局は船田議長の辞任を認めた。その後、船田は時間をおいて再び衆議院議長に復帰したが、佐藤の非情さには反感を感じ、心情的には福田に傾いていた。
― 佐藤首相が引退するときは、後継政権は福田。
船田が福田を後継に推していたのは、船田その人の考え方や人格によっていた。船田も、岸信介、石井光次郎、福田たちと同じく、政界の一部からは、ときによって、「台湾ロビー」「韓国ロビー」と呼ばれることがあった。日中国交正常化については、後ろ向きだった。
この同系列の思想ゆえに、船田は、福田を支持していたのである。
それに、船田はもともと、大野伴睦派の代貸しでありながら、一時期、官僚生活を経、学校経営にもあたっていただけに、あくまで堅実、安定型の人柄である。
といったところからも、福田支持であった。
その船田は
― 佐藤首相は、三期で引退して福田に禅譲したらどうなのか。
という気持ちがつよかった。
そのあたりの船田の心情は、とうに川島にも読めている。

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「ぼくは、いろいろ考えてみたんだがね、佐藤君が三期でやめるとなると、そのあとは、君、大混乱だよ。三木、前尾君あたりは、四選阻止だと、いきりたっている。佐藤君が三期で辞任といえばだ、自分たちの圧力に、佐藤が屈したと宣伝する。勢いを得ることになる。そうなれば、佐藤君が、後継者はこうしたい、ああしたいといっても、反主流は納得しやあせん。たいへんな荒れ方になるだろうね」
川島のそういう言葉の言外には、― 佐藤が三期で辞任したとしても、福田政権の実現はむつかしい。
ということが言外に含まれていた。
― だから、このさいは、佐藤に四選させて、そのあとゆっくりと福田後継体制をかためたらどうだ。
というのが川島のいいたいところであった。
船田も考え込んだ。それに、川島はさらに追い討ちをかけた。

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「ぼくは、いろいろ考えてみたんだがね、佐藤君が三期でやめるとなると、そのあとは、君、大混乱だよ。三木、前尾君あたりは、四選阻止だと、いきりたっている。佐藤君が三期で辞任といえばだ、自分たちの圧力に、佐藤が屈したと宣伝する。勢いを得ることになる。そうなれば、佐藤君が、後継者はこうしたい、ああしたいといっても、反主流は納得しやあせん。たいへんな荒れ方になるだろうね」
川島のそういう言葉の言外には、― 佐藤が三期で辞任したとしても、福田政権の実現はむつかしい。
ということが言外に含まれていた。
― だから、このさいは、佐藤に四選させて、そのあとゆっくりと福田後継体制をかためたらどうだ。
というのが川島のいいたいところであった。
船田も考え込んだ。それに、川島はさらに追い討ちをかけた。

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「もうひとつ……ぼくが考えていることはだ。このさい、ぼくと君とが組んで、佐藤四選のリーダーシップを握りたい……これなんだ。それで中間派全体を、佐藤四選支持にまとめれば、政局の主導権は中間派で取れる。われわれ中間派はだね、佐藤体制のなかの主流として、人事・政策について、発言権を増大できるんではないか。そういった立場から、佐藤四選支持の音頭を、君にもとってもらいたいんだ……」
川島の説得で、船田の心情も、急速に佐藤四選支持へと動きはじめた。
― もし、佐藤四選なしとなると、あと目をめぐって、福田が勝利をおさめられるという保証はない。
― このさいは、川島とともに、佐藤四選支持へと、旗を振ったほうが賢明かも知れん。そのあと、福田への禅譲体制をつくりあげるのが、福田のためにも、得策かも知れない。
船田も戦前派である。そこは巧者らしく考えた。
「賛成しよう。君と一緒に、佐藤四選支持で中間派をまとめよう」と答えた。
「そう願えて、有り難い」
川島は笑顔になった。それに船田は問いかけた。
「ところで中曽根康弘君は、どうなんだ?」

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「もうひとつ……ぼくが考えていることはだ。このさい、ぼくと君とが組んで、佐藤四選のリーダーシップを握りたい……これなんだ。それで中間派全体を、佐藤四選支持にまとめれば、政局の主導権は中間派で取れる。われわれ中間派はだね、佐藤体制のなかの主流として、人事・政策について、発言権を増大できるんではないか。そういった立場から、佐藤四選支持の音頭を、君にもとってもらいたいんだ……」
川島の説得で、船田の心情も、急速に佐藤四選支持へと動きはじめた。
― もし、佐藤四選なしとなると、あと目をめぐって、福田が勝利をおさめられるという保証はない。
― このさいは、川島とともに、佐藤四選支持へと、旗を振ったほうが賢明かも知れん。そのあと、福田への禅譲体制をつくりあげるのが、福田のためにも、得策かも知れない。
船田も戦前派である。そこは巧者らしく考えた。
「賛成しよう。君と一緒に、佐藤四選支持で中間派をまとめよう」と答えた。
「そう願えて、有り難い」
川島は笑顔になった。それに船田は問いかけた。
「ところで中曽根康弘君は、どうなんだ?」

968

中曽根派が大きなポイントになってくることは、たしかであった。中曽根派は三十五名を擁していて、中間派のなかでは最大の派閥である。中曽根派が佐藤四選反対にまわると、あとの中間派は総計七十名足らず。これではヘゲモニーをにぎれるだけの大勢力とはいえない。
船田が中曽根派の動向について懸念する理由は、もうひとつあった。
中曽根は、もともと反主流的存在だったからである。22年、政界に初登場してきたときには民主党であった。24年、吉田自由党内閣以後は、予算・外務委員会で、中曽根は政府与党の急所・弱点をつきつづけた。自民党になってからは、中曽根は河野一郎派に属して、森清とならんで代貸しになった。岸内閣の最後の改造で科技庁長官として初入閣したが、その政治的立場はつねに反主流であった。その反岸・佐藤の姿勢は、つい最近まで一貫してきている。
ようやく、佐藤首相が党内宥和を考え、中曽根を運輸大臣、つぎに防衛庁長官にすえたので、準主流にはなってきたが― 完全な主流ではない。
― 総裁公選では、反佐藤にまわるのではないか?
という見方があった。それで船田は、中曽根について懸念をいだいたのである。

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中曽根派が大きなポイントになってくることは、たしかであった。中曽根派は三十五名を擁していて、中間派のなかでは最大の派閥である。中曽根派が佐藤四選反対にまわると、あとの中間派は総計七十名足らず。これではヘゲモニーをにぎれるだけの大勢力とはいえない。
船田が中曽根派の動向について懸念する理由は、もうひとつあった。
中曽根は、もともと反主流的存在だったからである。22年、政界に初登場してきたときには民主党であった。24年、吉田自由党内閣以後は、予算・外務委員会で、中曽根は政府与党の急所・弱点をつきつづけた。自民党になってからは、中曽根は河野一郎派に属して、森清とならんで代貸しになった。岸内閣の最後の改造で科技庁長官として初入閣したが、その政治的立場はつねに反主流であった。その反岸・佐藤の姿勢は、つい最近まで一貫してきている。
ようやく、佐藤首相が党内宥和を考え、中曽根を運輸大臣、つぎに防衛庁長官にすえたので、準主流にはなってきたが― 完全な主流ではない。
― 総裁公選では、反佐藤にまわるのではないか?
という見方があった。それで船田は、中曽根について懸念をいだいたのである。

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