281 ガサガサという音で気付いた男は 昔ゴリラだった何かが蟹の動きに合わせて 動いているのを見て吐いた。 地獄がどんなところか知らないが、 あれより酷いところだとは到底思えない。 蟹どもはゴリラの体に纏わりつき未だに齧っていた。 ゴリラの体が傾き、男にめがけて首が折れた。 その拍子にドラム缶から蟹があふれ出て、 目の前にある生きた獲物に標的を変えてきた。 男は絶叫した。 足元にボトボト蟹どもが落ちてくる。 足に纏わり付く。 最初はくすぐったいくらいで、 次にかゆくなってきた。 椅子ごと体をよじってもどんどん男の足に纏わり付く。 その内、小指に激痛が走り、 自分の中にも蟹が侵入してきたことに気付いた。 ドリルで穴を開けられるほうが万倍もマシだろう。 蟹が爪をちょっとずつ引き剥がし、 男の中に入る努力をしている。 脱糞し、失禁したが、 蟹は許してくれない。 喉が潰れようが、絶叫が何の意味もなかろうが、 男は叫んだ。 しかし蟹どもは自分の体に入ろうとしている。 男は気が狂うと思った、もう気が狂ったと思った。 ドラム缶風呂2015/06/24 02:441