774 寡黙なタイプだったが読書に疲れると事務局に顔を出しては「お嬢さん、最近どうかね?」といった調子で気軽に女子職員に声をかけてくる。我々事務局の人間に親しみを感じてくれているのがよく伝わってきた。党本部に来ても事務局にちょくちょく顔を見せる幹事長は意外に少ない。ベストスリーは田中角栄、竹下登、大平正芳といったところ。現れ方は三者三様だった。田中はどっかと座り込むや 紙とペンを取りだして何事か書き付けては「あの時 吉田首相が……」などという話を一生懸命に語り、話し終えると慌しく席を立っていずこにか消える、というパターン。竹下の「ご機嫌伺い」は決まって「どや?」。ニコニコしながら面白おかしい話を披露しては 職員たちを笑わせていたものだ。これらに対して大平は、もっぱら聞き役の風情だった。 「鈍牛」などと聞くと いかにもアバウトな印象を受けるが、大平の実像は全く違った。手帳にびっしりとスケジュールを書き込むような几帳面な人物だったのである。事務局が幹事長用に作るポケットサイズの日程表の内容まで自分の手帳に書き写す念の入れようだった。 匿名さん2020/05/09 19:411