078 【小説】「愛の蹉跌」=第8回= 「お客様。コーヒーのおかわりは?」『えっ?あ、ありがとう。』 吉原近くの ‘デリーズ’東浅草店。左奥の喫煙席に安羅木(やすらぎ)一郎の姿があった。午前2時。エンペラー閉店後、遅い夕飯をとった。そして、彼は、全国紙、夕刊紙、スポーツ紙など10数種類の新聞を持ち込み、各紙の三面記事に釘付けになっていた。そう、秩父大野原で発見されてしまった遺体。安羅木の予想はなぜ外れたのか?なぜ予想外に早く遺体が発見されたのか?・・・ 匿名さん2012/08/14 21:18
079 当然他人様に聞くわけにはいかず、しょうがない。マスコミ報道に頼るしかなかったのだ。さらに、彼はいわゆる前科前歴がない。むかし駐車違反で交通違反切符を切られたが、あれは道路交通法の特則である「反則金制度」と呼ばれるもの。前科にはならない。彼個人は、いわゆる犯罪組織とも関わりはない。なので、これまで縁がなかった警察の動きは五里霧中だったのだ。しかし、警察の対応の素早さは彼の想像を遥かに超えていた。 匿名さん2012/08/14 21:19
080 安羅木の認識が甘かったのである。日刊‘ゲンダイジン’平成24年(2012年)4月2x日....「埼玉県警捜査1課及び秩父東警察署捜査本部は、2x日、被害者(男性)の似顔絵を公開した。」 ......発見された被害者の頭蓋骨に粘土細工を施し、骨格や歯型から、被害者の生前の顔を復元する作業。捜査本部は、早速この作業を終了し、被害者似顔絵の全国公開に踏み切ったのだ。言うまでもない。市民からの情報を募り、被害者の身元を特定するためだ。 匿名さん2012/08/14 21:19
081 / ̄ ̄ ̄ ̄\ ( 人___ ) |ミ/ ー ー ) (6 :(_ _):) ノ|/∴ノ 3 :ノ、 / \____.ノヽ これが、公開された被害男性の似顔絵である。安羅木は、とっさに目をそむける。殺害した場面と、死体遺棄をしたシーンを想起し、思わずコーヒーを吐き出しそうになった。日刊‘ゲンダイジン’に、さらに次のくだりがある。...... 匿名さん2012/08/14 21:19
082 「埼玉県条例の規定により、3年に一度の水質検査が実施されてきた関係上、事件現場のマンホールも、3年に一度開閉されるのみであった。しかし、昨年から、近隣住民より、‘あのマンホールから異臭がする’’飼い犬がマンホール付近を通ると執拗に吠える’との情報が大野原駐在所に複数よせられていた。」 匿名さん2012/08/14 21:20
083 「そこで秩父東警察署の署員がマンホール蓋を開けたところ、白骨化した遺体がみつかったものである。」.......「腐乱の進み具合は尋常ではなく、マンホール内から取り出そうとした際に、動体と首がちぎれてしまうほどであったという。」 安羅木に急なめまいが襲う。彼は、立ち上がり、急ぎトイレへと駆けこんだ。便器内に少し前に食した物をおう吐する。『警察に自首しようか?』『いや、芙美江のためにここまで来たんだ。あと少しの辛抱だ。』 匿名さん2012/08/14 21:20
084 『次はあの女さえ始末すれば』『いやいやそれはいけない』芙美江の笑顔が浮かぶ。『ぉ、お、オェーッ!』安羅木は、おう吐を繰り返していた。そして、目から涙が溢れ号泣した。・・・・・・・(続きは次回) 匿名さん2012/08/14 21:21
086 【小説】「愛の蹉跌」=第9回= 澄み切った青空のもと、近くに険山脈が連なる小さな町。秩父東警察署はこの町の中心部に位置する。2階の刑事1係に大野原で発見された白骨腐乱死体、通称‘マンホール事件’の捜査本部がおかれている。警察の始業時刻は朝8時半だが、主任刑事の高原雅浩(警部)は、今朝6時に登庁。鑑識係及び埼玉県警科学捜査研が作成した報告資料、被害男性の粘土復元を施した骸骨写真とにらめっこする。 匿名さん2012/08/19 02:48
087 頭蓋骨の損傷具合から、被害男性は、頭部を殴打されたことが判明。これが致命傷となったと思われる。しかし、殺人事件とは未だ公表できないでいる。また、遺体発見現場及びその周辺の写真、さらに、埼玉全域、群馬、山梨、長野、そして東京から秩父への侵入経路を電子地図でくまなく調査する。しかしである...被害男性の似顔絵を全国にマスコミ報道させてから既に1か月。有力情報が全くない。もちろん、全国の失踪行方不明者リストとも照合した。 匿名さん2012/08/19 02:49