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ホスラブてめちゃ保守

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だよな

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池田さんを中心にして宏池会という派閥が誕生したのは32年のことだ。長老の益谷秀次、林譲治さんや、前尾繁三郎、大平正芳、黒金泰美さんや私らが参加した。当初は政策を勉強するというより、三々五々集まって情報交換する場だった。
一方で池田さんの大蔵省時代の友人の田村敏男さん(事務局長)を中心に、下村治さんや学者が集って勉強会をしていた。池田政権に備えて政策を準備するという明確な目標があったわけではない。下村さんが日本経済は興隆期に入ると言い始めて、これは重要なテーマなのでみんなで勉強しようということになったのだった。
34年1月に中山伊知郎さんが「賃金二倍を提唱」という論文を発表した。私は面白く読んだが、池田さんも注目して、2月に広島で月給二倍論として演説した。月給だとサラリーマンしか対象にならない。私どもが意見を言って最後は所得倍増論という言葉に落ち着いた。

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私は昭和34年に幹事長に就任した。幹事長時代に私は岸さんに、今後十年間で日本経済の規模を二倍にする長期計画すなわち「生産力倍増十ヵ年計画」を政府与党の計画として採用するよう進言した。そして自民党は同年6月の参議院選挙で、投票日直前に「生産力倍増十ヵ年計画」を公約に打ち出して勝利した。他方、当時政府与党の要職に就いていなかった池田勇人氏が、郷里広島で「月給二倍論」をブチ上げて、大きな反響を巻き起こした。私はそれを大変心配した。終戦後まだ十年余りの今日、消費美徳論の上に立って月給二倍とは何事か。池田氏の「月給二倍論」と私の「生産力倍増論」の理念の違いは、のちに池田氏と私が衝突する大きな原因となる。

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6月2日の参議院選挙で、自民党の圧勝がきまったとき、まっさきに首相官邸に乗り込んできたのは、大野伴睦であった。
「君が、安保体制をつくるというんならだ、わしは副総裁として、構想がある」と、党役員改選の試案を、岸に示した。
大野構想なるものは― 河野幹事長、池田総務会長、佐藤政調会長であった。
本当のところ、岸はこれに反対であった。岸はひそかに、― 幹事長には、大番頭の川島正次郎を復活させ、福田赳夫は、経済閣僚として入閣させる。という人事を組み立てていた。だが、せっかくの大野構想である。頭から反対したのでは、大野はもちろん、河野も反岸になりかねない懸念があった。
「君の案は、結構だが……」
岸は大野構想に乗った形をみせたあと、
「しかし、河野君を幹事長にする……ということを党内が承知するかね? 納得すればいいんだが……」といった。
「わしが、党内を説得する」と、大野は勢い込んだ。

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「それでは、副総裁の君に、党内調整をたのむ」と、岸は恩に着る形をとりながら、大野に一切を預けた。大野構想を伝え聞いた佐藤が、すぐ電話で、「兄貴、おれは河野君の幹事長には反対だ」と抗議してきた。岸は、笑った。「なあに、各派が反対するのは、わかり切っている。伴ちゃん自身、これは無理だと、さじを投げるよ。そう見こして、いちおう賛成しといただけだ……」事実、石井、池田派に反対が強かった。主流の岸、佐藤派も同じことで、大野の説得にはどの派も乗らなかった。やむなく大野は、河野に、「あい済まん」と、頭をさげてしまった。河野としては、党人として、ぜひ幹事長をつとめたいところだった。これだけの実力者でありながら、戦後、鳩山自由党で、追放になるまでの八か月、幹事長の椅子にいただけだ。それに、将来の総裁を志向するならば、幹事長のポストは跳躍台でもあった。幹事長就任が不可能と知って、河野は、明らかに不機嫌であった。

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「あんたの努力には、感謝する。が、岸や佐藤が怪しからんじゃあないか……」
河野の怒りは、そちらにむけられていた。
「おれを、本気で幹事長にしようという気があるならだ、佐藤は自分の派の反対を鎮めればいい。岸は総裁として、各派を説得してくれてもよさそうなものだ。まったく、あんたに任せっ放しで、知らん顔だ。ということは、おれを幹事長にする気がないからだ。もう、岸に協力はできん」大野も、
「岸ははじめから、おれを体よく欺していたわけだな」と、憤慨をはじめた。
河野が、担当記者たちを事務所に集めて、
「岸君と私は時局認識を異にする。協力は、おことわりだ」と声明したのは6月12日であった。
すっかり慌てた岸は、河野と大野を官邸に呼んだ。河野に入閣協力を求めたが、河野は、それに、こう答えた。
「君が、本当に、ぼくを必要とするんなら、内閣改造について、ぼくの提案を容れることだ」と凄んだ。
「もちろん容れられるものなら、容れようじゃあないか」という岸に、河野は、
「日米安保があるから、藤山君は外相に留任させるとして、あとは全面改造、閣僚総入れ替えだ」と、叩きつけるようにいった。

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岸は、一瞬絶句した。やっと、
「栄作も蔵相に留任させたいんだが……」と答えた。
「だめだ!」
一言のもとに、河野は拒否した。河野の狙いは、佐藤栄作を閣外に追うことにあったのだ。
― 一月、佐藤は自分たちに協力を要請した。われわれはそれを承知した。というのに、自分の幹事長就任に反対した。一矢、報いてやる。
その感情が、河野の胸のなかに噴きあげていたのだ。
― 岸が本気で、われわれの協力を必要と思うなら、誠意を示せ。弟を閣外に叩き出しても、なお君が欲しい……という誠意をみせろ。
そこに、河野の全面改造の真意があった。大野にしても、そうであった。岸は、返答に窮した。
「考えさせてくれ……」と、体をかわしたあとで、
「そういう条件は抜きにしてだ、ぼくは君に、是が非でも入閣してもらいたいと思っている。閣僚としての協力を頼みたいんだ」と、説得にかかった。
―枢要閣僚の椅子を与えるから、佐藤を閣外に出せなどと、いわんでくれ。
という心底だった。河野は応じなかった。
「藤山君を除く全面改造が、嫌だというなら、ぼくは一切の役職おことわりだ」
この言葉の前に、岸は一言もなかった。

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その夜、岸は赤坂の料亭に、川島と佐藤とを呼んで、河野と大野のその一件を相談した。困り切っている岸に、佐藤は、
「河野君が入閣せん……というんなら、さいわいなことだ」といった。不敵ないい方であった。その強さに、岸は眼をみはった。佐藤は、平然とした面持ちで、話しつづけた。
「池田君に会ったところ、主流派が河野を斬るんなら、入閣して協力するといっている。河野が入るようなら入閣、協力は嫌だということだ。河野が自分から入閣しないと、いってきたのは、まことに結構、これで池田君を入閣させられる。兄貴も、ぼくもよほどやりよくなる。強力な体制ができる」
「それはそうにちがいないが……河野みたいなのを野に放つと厄介だ」
河野が反主流派として、大野と一緒になって、暴れまわったら、大事になるというおそれを、岸は感じていた。むしろ佐藤のほうが、大胆に割り切っていた。
「どうせ、大野とか河野、それに三木武夫君……党人派だ。われわれ官僚派とは、質も考え方も違う。一緒に旅はできん。それどころか、いつかは、対決せねばならない連中だ。どうせそうなるなら、早いうちに斬って捨てて、根を枯らすのが賢明だ」

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佐藤は、あくまで冷徹であり、非情でもあった。その底には、党人を軽視し蔑視し、それらを排除して、官僚勢力で政権の座を占め、それを維持していこうという意識と、計算とがあった。
岸のほうは、吉田倒閣から保守合同への過程で、鳩山一郎をはじめ三木武吉、大野伴睦、河野一郎たち党人との連携の上に生きてきている。彼らに、友誼もいだいていた。佐藤ほどには、冷酷に党人を斬れない感情のしがらみがあった。考え込む岸に、佐藤は、やや嘲笑気味な口調でこういった。
「……なにを迷っています?河野を斬れずに、また頭を下げにいくとしたら、総理、総裁の権威は形なしだ。岸は弱腰だと、党内の侮りを受ける」
「…………」かすかに岸はうなずいた。
「それに、そんな弱腰で侮りを受けるようでは、日米新安保も覚つかないことになる」
その日米新安保という佐藤の言葉が、岸を踏み切らせた。
「よし、河野を捨てる」
岸も、岸派、佐藤派、池田派、石井派で、主流派をつくり、日米安保体制をかためることを決心した。

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岸― 私はこの党・内閣改造がいよいよ安保改定の最後の仕上げをする人事だということで、本当の挙党一致の布陣をつくりたかった。それで河野君と池田君の両方を内閣に入れるつもりだったんです。ところが池田君は当時、河野とは倶に天を戴かずということをいっておったんだ。そこで、私はそれまでの経緯からして、できれば河野と池田を閣内に入れたいが、池田が河野と一緒に入閣するのを拒むなら、河野だけはどうしても閣内に入れないと思ったんです。
― 河野さんには随分説得したようですが。
岸― そうです。僕はそのとき河野にこう説いたんだ。今度はいよいよ安保条約を締結しこれを完成する最後の内閣であり、したがって挙党一致をものにしたいので入閣してほしい。とにかく君と池田の両方に入ってもらいたいが、池田は君と席を同じうすることを肯んじないようだから、君が入れば池田は入らないだろう。君がどうしても入閣しないというなら、私は池田を説く。そうすれば池田は必ず入る。池田君を是非閣内に入れたいけれども、もし万が一池田君が入らなくても、君だけはひとつ入閣してくれよ。僕はそう説いたんだ。

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― 河野さんはどんな反応でしたか。
岸― どうしても入らぬというんだ。君が入閣してくれれば池田君が入らなくてもそれでいいんだ。しかし君がどうしても肯んじないなら、君は外に弾き出されるよ。党の執行部については俺はすでに決めたんだから、いまさらこれを動かすわけにはいかない。君が入閣しないとなれば、君は内閣と党のどちらからも出ることになるがそれでいいのかといったら、河野は「それでいい」というんだ。
― 河野さんが入閣を拒否して、その後池田さんはどうなりましたか。
岸― それで私は池田君を説いたんだ。池田君は内閣に入ってくれたよ。
― だから、あの人事改造が河野さんの分かれ目でもあったわけですね。
岸― そういうことです。もともと河野という男は、世間でいうようなワルじゃない。だから、私は記者会見でこういったことがあるんです。君らは河野君がワルだワルだといっているが、決してワルじゃないよ。よく偽善者というのがいるが、河野なんかは偽悪者なんだ。本来いい人間なのに妙に悪者顔するんだ。君らから聖人君子のようにいわれておって、実は腹の底が真っ黒けな悪人がおるんだよ、とね。

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