左翼は偽善者、保守派は正義
だよね？
僕もこれを憂慮しとるし、君たち二人もそれを一番心配しているはずだと思う。大局的な見地からいって三者会談は決裂ということにしたくない。それにまだまだ話すこともあるし、話し合いの余地もあると思うのでね」
三木は しらっとした表情で重ねて
「三者会談……明日か明後日にまたやろうや」
と提案した。
実をいうと このとき福田も大平も、やや茫然といった心理状態に落とし込まれていた。ここに乗り込むまでの間は
ーこの三者会談で三木を退陣に追い込む。
ー即時退陣ということにはならなくとも、少なくとも退陣の時期を約束させる。
という気負い込んだものがあったのだ。それがこの二時間に近い三木との話し合いの間に、うやむやにほぐされてしまった。それだけでなく
ー三者会談をなお続行する。
という三木の設定したコンベアベルトの上に乗せられてしまったのだ。
ーこの先どこまで乗せられていくのか。
ー自分たちが主導権を握ってスタートさせた三木おろしの行方が、いまや掴み難いものになってきた……。
かといって この席で
ー三者会談はもうお断りだ。
と たんかを切って決裂させるわけにはいかなかった。
三木は しらっとした表情で重ねて
「三者会談……明日か明後日にまたやろうや」
と提案した。
実をいうと このとき福田も大平も、やや茫然といった心理状態に落とし込まれていた。ここに乗り込むまでの間は
ーこの三者会談で三木を退陣に追い込む。
ー即時退陣ということにはならなくとも、少なくとも退陣の時期を約束させる。
という気負い込んだものがあったのだ。それがこの二時間に近い三木との話し合いの間に、うやむやにほぐされてしまった。それだけでなく
ー三者会談をなお続行する。
という三木の設定したコンベアベルトの上に乗せられてしまったのだ。
ーこの先どこまで乗せられていくのか。
ー自分たちが主導権を握ってスタートさせた三木おろしの行方が、いまや掴み難いものになってきた……。
かといって この席で
ー三者会談はもうお断りだ。
と たんかを切って決裂させるわけにはいかなかった。
そうすれば夜の議員総会で三木総裁の不信任、解任決議まで事態は暴走してしまう。党は分裂の危機に見舞われる。それだけは回避しなければ福田にも大平にもマイナスになる。
福田は多少やけ気味になって
「そんな悠長な場合じゃない。三者会談、どうせやるのなら早いほうがいい。明日……だ。2時ぐらいがいい」
噛みつくようにいった。
「結構だ。そうしよう」と三木は答えた。
なんとも割り切れない不快な感情のまま福田と大平が席を立ち上がった時、三木がこういった。
「率直な質問で済まんのだが……」
三木は一寸、間をおいた。なにごとかと耳をそばだてる二人に向かってこういった。
「いったい、僕を辞めさせるというがね。そのあと福田君、大平君どっちが後継総理総裁になるのかね？」
人を食った質問であった。
三木おろしは どちらが後継者ということなく「ただ、三木をおろせ」ということで進行してきているのだ。その間に
ー福田になるだろう。
という空気が濃化していることは事実だ。それは福田にとっては望むところであっても、大平にとって快いものではない。
福田は多少やけ気味になって
「そんな悠長な場合じゃない。三者会談、どうせやるのなら早いほうがいい。明日……だ。2時ぐらいがいい」
噛みつくようにいった。
「結構だ。そうしよう」と三木は答えた。
なんとも割り切れない不快な感情のまま福田と大平が席を立ち上がった時、三木がこういった。
「率直な質問で済まんのだが……」
三木は一寸、間をおいた。なにごとかと耳をそばだてる二人に向かってこういった。
「いったい、僕を辞めさせるというがね。そのあと福田君、大平君どっちが後継総理総裁になるのかね？」
人を食った質問であった。
三木おろしは どちらが後継者ということなく「ただ、三木をおろせ」ということで進行してきているのだ。その間に
ー福田になるだろう。
という空気が濃化していることは事実だ。それは福田にとっては望むところであっても、大平にとって快いものではない。
大平は即座に
「まだどちらとも決まっていませんよ」
と答えた。福田は嫌な顔をした。すかさず三木はこういった。
「後が決まってない以上、僕はいよいよ辞められんね」
三木は心中でニヤリと笑いながらも、表情だけは大真面目だった。
三者会談が終わるのを待ちながら、午後7時、ホテルオークラの一室に挙党協の世話人たちが集まりつつあった。ほとんどが殺気だった表情であった。
「三者会談は結論なしの持ち越しらしい」
という情報がすでに伝わっていた。江崎真澄や鈴木善幸が失望の色を浮かべる傍で、園田直は
ーこの連中は福田も大平もだらしがないといい始めるだろう。あるいはまた彼らは肚の中で、園田の作戦の失敗だと思うかも知れない。
そう思って落ち着かなかった。
「議員総会そのものが まずかったよ」
田中派の久野忠治が決めつけるようにいった。
「船田さんが余計なことをいい過ぎた」
と久野はつけ加えた。挙党協代表世話人である船田中は、まだこの席に姿を見せていなかった。やり場のない鬱憤が、その船田に向けられた。
「そうだ。いわずもがなのことなど、しゃべったからな。
「まだどちらとも決まっていませんよ」
と答えた。福田は嫌な顔をした。すかさず三木はこういった。
「後が決まってない以上、僕はいよいよ辞められんね」
三木は心中でニヤリと笑いながらも、表情だけは大真面目だった。
三者会談が終わるのを待ちながら、午後7時、ホテルオークラの一室に挙党協の世話人たちが集まりつつあった。ほとんどが殺気だった表情であった。
「三者会談は結論なしの持ち越しらしい」
という情報がすでに伝わっていた。江崎真澄や鈴木善幸が失望の色を浮かべる傍で、園田直は
ーこの連中は福田も大平もだらしがないといい始めるだろう。あるいはまた彼らは肚の中で、園田の作戦の失敗だと思うかも知れない。
そう思って落ち着かなかった。
「議員総会そのものが まずかったよ」
田中派の久野忠治が決めつけるようにいった。
「船田さんが余計なことをいい過ぎた」
と久野はつけ加えた。挙党協代表世話人である船田中は、まだこの席に姿を見せていなかった。やり場のない鬱憤が、その船田に向けられた。
「そうだ。いわずもがなのことなど、しゃべったからな。
あんなことをいったばかりに 三木おろしはロッキード隠しだという印象を またまた深めてしまった。これでは三木が得意とする世論の支持が いよいよ三木に集まってしまう」
「そのことがあるんで記者クラブに配布するプリントは修正しておいた」
と鈴木は用意してきたプリントを配った。確かにそれは船田が議員総会で発言した「政治的考慮」という言葉を削除し、かわりに「国民の納得する程度まで」という修正の文字が加えられてあった。
「しかしもう、あとの祭りだよ。あの議員総会の船田発言はテレビで放映されてしまっている。明日の新聞だって、あの船田発言をそのまま報道するだろう」
捨て鉢めいた口調でいったのは江崎であった。
三者会談で福田、大平が三木おろしをやり損なったという情報と、議員総会の船田発言に対する批判とで、不満と不平とが皆の胸の中に滾っていた。
そうしたところに、やや困憊した表情で福田と大平とが入ってきた。椅子についた福田は、それでもことさらに笑顔を浮かべながら
「三者会談の経過を報告致します」
と三木とのやり取りを伝えた。誰もが重苦しい表情で聞いていた。
「そのことがあるんで記者クラブに配布するプリントは修正しておいた」
と鈴木は用意してきたプリントを配った。確かにそれは船田が議員総会で発言した「政治的考慮」という言葉を削除し、かわりに「国民の納得する程度まで」という修正の文字が加えられてあった。
「しかしもう、あとの祭りだよ。あの議員総会の船田発言はテレビで放映されてしまっている。明日の新聞だって、あの船田発言をそのまま報道するだろう」
捨て鉢めいた口調でいったのは江崎であった。
三者会談で福田、大平が三木おろしをやり損なったという情報と、議員総会の船田発言に対する批判とで、不満と不平とが皆の胸の中に滾っていた。
そうしたところに、やや困憊した表情で福田と大平とが入ってきた。椅子についた福田は、それでもことさらに笑顔を浮かべながら
「三者会談の経過を報告致します」
と三木とのやり取りを伝えた。誰もが重苦しい表情で聞いていた。
最後に福田は
「決裂……と思ったが、三木君が決裂とは発表しないでくれ、話し合いは続けたいというものだから、一応そういうことにしておこう……ということになった」
と話を結んだ。聞いていた二階堂進は
ーまたしても二人は三木にしてやられてきた。
いよいよ渋い面持ちになった。園田は さっきからの重苦しい気まずい空気を突き破るように、そのしわがれた声でこういった。
「率直にいわせていただければ、福田先生も大平先生も、なぜ三木総理に食い下がらんのです。私たちは三木をおろして、お二人の天下を作ろうと真剣になっている。両先生がその気になって 三木総理を攻めに攻めていただかねば、できるものができなくなってしまいます」
園田はことさら自分の親分である福田を激しく責めることによって、この場の沈滞した雰囲気を再び三木おろしに起爆させるつもりで、あえてそういう発言をしたのであった。それを承けて鈴木、江崎たちが
「こうなれば このあと再開される議員総会で、三木総裁不信任か解任決議案を出したらどうか。それでなければどうにもならん」と怒鳴り声をあげると
「まあ、まてよ」
「決裂……と思ったが、三木君が決裂とは発表しないでくれ、話し合いは続けたいというものだから、一応そういうことにしておこう……ということになった」
と話を結んだ。聞いていた二階堂進は
ーまたしても二人は三木にしてやられてきた。
いよいよ渋い面持ちになった。園田は さっきからの重苦しい気まずい空気を突き破るように、そのしわがれた声でこういった。
「率直にいわせていただければ、福田先生も大平先生も、なぜ三木総理に食い下がらんのです。私たちは三木をおろして、お二人の天下を作ろうと真剣になっている。両先生がその気になって 三木総理を攻めに攻めていただかねば、できるものができなくなってしまいます」
園田はことさら自分の親分である福田を激しく責めることによって、この場の沈滞した雰囲気を再び三木おろしに起爆させるつもりで、あえてそういう発言をしたのであった。それを承けて鈴木、江崎たちが
「こうなれば このあと再開される議員総会で、三木総裁不信任か解任決議案を出したらどうか。それでなければどうにもならん」と怒鳴り声をあげると
「まあ、まてよ」
腕組みをしながら不快気に口をつぐんでいた保利が、ここで初めて口を開いた。
「三者会談決裂……ということであれば、もはや三木君とは話し合いの余地はないということで、議員総会で不信任、解任を決議しても筋が通る。だが話し合いが継続ということであれば、そうもいくまい。不信任、解任決議まで議員総会が突っ走れば、三木君に分裂の口実を与えてしまう。これはまずい。不信任とか解任決議とかは、そうするぞという最後の切り札として取っておくことに意味があるんだ」
この保利の発言は
ー保利さんのことだから、後々の思慮、作戦があってそういうのだろう。
と思わせるものがあった。当の福田や大平にも 保利にそれを期待するものがあった。
実はこうした福田、大平の他力本願的な姿勢が おいおいに反主流派の熱気をさまし、結束や空気を緩めてしまうのだが、今の段階では保利の発言に従うよりほかになかった。それに議員総会も急いで再開しなければならない。その時間が迫っていた。
世話人たちは その部屋を引き払って すぐに衆議院別館の講堂に向かった。出席者は かなり目減りしていた。
「三者会談決裂……ということであれば、もはや三木君とは話し合いの余地はないということで、議員総会で不信任、解任を決議しても筋が通る。だが話し合いが継続ということであれば、そうもいくまい。不信任、解任決議まで議員総会が突っ走れば、三木君に分裂の口実を与えてしまう。これはまずい。不信任とか解任決議とかは、そうするぞという最後の切り札として取っておくことに意味があるんだ」
この保利の発言は
ー保利さんのことだから、後々の思慮、作戦があってそういうのだろう。
と思わせるものがあった。当の福田や大平にも 保利にそれを期待するものがあった。
実はこうした福田、大平の他力本願的な姿勢が おいおいに反主流派の熱気をさまし、結束や空気を緩めてしまうのだが、今の段階では保利の発言に従うよりほかになかった。それに議員総会も急いで再開しなければならない。その時間が迫っていた。
世話人たちは その部屋を引き払って すぐに衆議院別館の講堂に向かった。出席者は かなり目減りしていた。
午前の議員総会が気抜けしたままで幕を閉じたことに、早くも先行きの失敗を見越して欠席した人たちや、三者会談の結果を記者たちの口から耳にして、これでは再開議員総会に出たところで無駄足だろうと読んで、ここに足を運ばない議員もいたのである。
会場の雰囲気はすでに熱気を失っていた。園田や鈴木が代わる代わる壇上に立って煽っても、中断前の総会の熱気を回復するには至らなかった。
むしろ福田、大平の不甲斐なさへの苛立たしさが、鬱憤となって充満していった。
それが上原会長の閉会宣言とともに爆発した。
「世話役やめろ！」
「三木から金をもらったのか！」
会場のあちこちから どぎつい野次が飛んだ。散会していく議員たちの間からは
「これじゃあ、とてもだめだ。今度 議員総会をやるといっても、おれは出ない」
「もうやめたよ」
「選挙区に帰るぞ。わが身のほうが心配だ」
そんな腹立ちまぎれの言葉が交わされた。
三木おろしに燃えていた田中派の幹部たちも、憤懣やる方ない表情であった。七日会会長の西村英一は 訥々としながら
「もう 再び両院議員総会を招集することは 難しくなった」と嘆いた。
会場の雰囲気はすでに熱気を失っていた。園田や鈴木が代わる代わる壇上に立って煽っても、中断前の総会の熱気を回復するには至らなかった。
むしろ福田、大平の不甲斐なさへの苛立たしさが、鬱憤となって充満していった。
それが上原会長の閉会宣言とともに爆発した。
「世話役やめろ！」
「三木から金をもらったのか！」
会場のあちこちから どぎつい野次が飛んだ。散会していく議員たちの間からは
「これじゃあ、とてもだめだ。今度 議員総会をやるといっても、おれは出ない」
「もうやめたよ」
「選挙区に帰るぞ。わが身のほうが心配だ」
そんな腹立ちまぎれの言葉が交わされた。
三木おろしに燃えていた田中派の幹部たちも、憤懣やる方ない表情であった。七日会会長の西村英一は 訥々としながら
「もう 再び両院議員総会を招集することは 難しくなった」と嘆いた。
「大福、勝手にやればよかろう」
二階堂は吐き棄てるようにいったものである。これに応じて江崎も
「全く話にならん」
と聞こえよがしの大声でそういった。優柔不断の福田、大平に対する怒りを抑え切れなかったのだ。
18日に保釈で出てきていた田中角栄は、その夜、電話で西村たちに
「もう三木おろしはできんよ。できるとすれば今日24日にできると思っとったが、今日できなかったとなれば もうだめだよ」
といってよこしたものである。
明けて25日の永田町界隈は、昨24日とは打って変わって人通りも疎らな閑散とした光景になった。
前日の議員総会に参集した三分の二の自民党議員のうち中堅、若手議員のほとんどが選挙区に飛び散っていったからである。
政局の動向とはかかわりなく、この12月がくれば衆議院議員四年の任期が切れ、自動的に総選挙になる。そこに至るまでに解散があれば総選挙の日時はさらに早まる。選挙運動に奔走しないわけにはいかないのだ。彼らの大部分は、三木おろしはとても見込みはないというあきらめがあったことも確かである。それがまた足早く彼らを永田町から去らせ、選挙区に向かわせたともいえた。
二階堂は吐き棄てるようにいったものである。これに応じて江崎も
「全く話にならん」
と聞こえよがしの大声でそういった。優柔不断の福田、大平に対する怒りを抑え切れなかったのだ。
18日に保釈で出てきていた田中角栄は、その夜、電話で西村たちに
「もう三木おろしはできんよ。できるとすれば今日24日にできると思っとったが、今日できなかったとなれば もうだめだよ」
といってよこしたものである。
明けて25日の永田町界隈は、昨24日とは打って変わって人通りも疎らな閑散とした光景になった。
前日の議員総会に参集した三分の二の自民党議員のうち中堅、若手議員のほとんどが選挙区に飛び散っていったからである。
政局の動向とはかかわりなく、この12月がくれば衆議院議員四年の任期が切れ、自動的に総選挙になる。そこに至るまでに解散があれば総選挙の日時はさらに早まる。選挙運動に奔走しないわけにはいかないのだ。彼らの大部分は、三木おろしはとても見込みはないというあきらめがあったことも確かである。それがまた足早く彼らを永田町から去らせ、選挙区に向かわせたともいえた。
三木内閣では国土庁長官になった。国土庁という役所はこのところその存在理由を疑われたりもしているが、私のころはできたばかりで、各省庁がエースを送り込んでいた。
事務次官は大蔵省の橋口収、計画調整局長は「列島改造論」の下河辺淳、土地局長は建設省の河野正三、地方振興局長は自治省の土屋佳照、土地局次長も後に農水省人事をめぐって時の大臣と一戦まじえた松本作衛といったそうそうたる顔ぶれだった。いずれも元の役所に戻って事務次官という官僚の頂点を極めている。
各省庁ができるだけ地歩を築こうと競い合った結果で、役所の「縄張り争い」がよい効果を生んだ典型である。
このように優秀な補佐役に恵まれてはいたが、三木内閣というのは政策うんぬんより、三木降ろし一色だった。50年11月、三木内閣は公労協のスト権ストという労働史上に残る大闘争に見舞われる。三木さんは閣僚の意見を求める。三木派の河本敏夫さんなどはしびれを切らして「総理、早く結論を出しなさい。解散をやってしまえばいい」とせっつく。
私も解散を勧めたが、三木さんは「金丸君、責任を持つか」と言う。
事務次官は大蔵省の橋口収、計画調整局長は「列島改造論」の下河辺淳、土地局長は建設省の河野正三、地方振興局長は自治省の土屋佳照、土地局次長も後に農水省人事をめぐって時の大臣と一戦まじえた松本作衛といったそうそうたる顔ぶれだった。いずれも元の役所に戻って事務次官という官僚の頂点を極めている。
各省庁ができるだけ地歩を築こうと競い合った結果で、役所の「縄張り争い」がよい効果を生んだ典型である。
このように優秀な補佐役に恵まれてはいたが、三木内閣というのは政策うんぬんより、三木降ろし一色だった。50年11月、三木内閣は公労協のスト権ストという労働史上に残る大闘争に見舞われる。三木さんは閣僚の意見を求める。三木派の河本敏夫さんなどはしびれを切らして「総理、早く結論を出しなさい。解散をやってしまえばいい」とせっつく。
私も解散を勧めたが、三木さんは「金丸君、責任を持つか」と言う。
そこで私は「田中は私が責任を持ちます。私がちゃんと決めてくる。やらなければいかん」と答えて、目白へ行ったら、田中さんも「やらなければダメだ」である。三木さんの手で解散をやらせたくなかったことも事実だろうが、私にこう言ったことも間違いない。
だが結局、三木さんは解散できなかった。やっておけばその後の状況は違っていた。政治というものはチャンスを逃したらダメなのである。私もかねて、三木さんはきれいごとばかり言っている人だなと思っていたが、この一件でますますその感を深くした。
そうした私の気持ちと同じように、ロッキード事件への三木さんの取り組みへの批判などがからんで、自民党内でも反三木の動きが風雲急を告げてきた。私は再び「保利暫定」を頭に描いた。三木内閣のことを「話にならん」と言っていた保利先生に、私は「あなたが総裁をやったらどうか」と単刀直入に聞いた。しかし保利先生はいくら勧めても「器ではない」の一点張りである。
私は「それではだれがいるんですか。三木さん以外ならだれでもいいと言いながら、福田さんじゃダメだという。
だが結局、三木さんは解散できなかった。やっておけばその後の状況は違っていた。政治というものはチャンスを逃したらダメなのである。私もかねて、三木さんはきれいごとばかり言っている人だなと思っていたが、この一件でますますその感を深くした。
そうした私の気持ちと同じように、ロッキード事件への三木さんの取り組みへの批判などがからんで、自民党内でも反三木の動きが風雲急を告げてきた。私は再び「保利暫定」を頭に描いた。三木内閣のことを「話にならん」と言っていた保利先生に、私は「あなたが総裁をやったらどうか」と単刀直入に聞いた。しかし保利先生はいくら勧めても「器ではない」の一点張りである。
私は「それではだれがいるんですか。三木さん以外ならだれでもいいと言いながら、福田さんじゃダメだという。
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