この49年は経済の重大性が国民の関心の的であった。そのキーを握っていたのは福田蔵相であった。
福田がただちに行なった政策は公定歩合の二％引き上げと融資抑制であった。二％引き上げは過去に例をみない大幅なものである。同時に福田は定期預金の金利を一％引き上げた。これは総需要を抑制する措置であった。
これらを手はじめにして福田は49年度予算の編成にかかった。国家予算は年々 物価にスライドして膨張していくことが不可避である。だが今度の場合 福田は大蔵省幹部会で緊縮財政を言明した。水田政調会長にも安定成長をつらぬくため過大な要求をしないよう求めた。
予算総体としては前年比19％増にとどまることになった。ことに福田が留意したのは公共事業費の節減で前年比0.7％増にとどめた。それに加え福田は財政投融資も引き締めにかかった。例年よりも7％少ない23％増に抑えた。
しかしこのせっかくの福田の努力も 春闘によるベース・アップ― 31％〜32％というこれまでにない驚くべき賃金引き上げによって なかば潰え去った。インフレはさらに昂進し その後の不況を深刻化させた。

大平にとって苦しい時期はまだ続いた。
4月11日には青嵐会の藤尾正行が外務省の公電を新聞に発表してしまうのだ。これにより大平外相と北京政府との折衝内容が暴露された。いわゆる “公電洩れ事件” である。相手国に対する信義を考えるとただでは済みそうになかった。問題の公電は佐藤孝行交通部会長が運輸省から入手し これが藤尾に渡ったのではないか、といわれている。
4月17日、私は瀬田の私邸に大平外相を訪ねた。日中航空協定は大詰めを迎え “日本と台湾政府の間の非公式折衝” が中心課題となっていた。大平にとっては最後の関門だ。
「台湾側に日台協定の内容を連絡したのだが、こちら側はだれも蒋経国に会えないでいる。だが書類は確実に蒋には渡っている」
大平は私の顔を見てそういった。その日が日中協定を閣議にかける日であった。
この朝の大平は首筋から顎にかけての線が妙に弱々しく ものを喋っている口が何だかパクパクといった感じでたくましさがまるでない。
変だ。大平の生命がはかない感じで 何だか急速な “衰え” を感じた。
この日の閣議で大平外相の答弁は必ずしもスッキリとはしなかったらしいが 結局協定は了承された。

三日ほどたった4月20日、台湾は日台空路を一方的に打ち切った。北京は直ちに協定を調印した。
一ヵ月ほどして毎日の久保記者から この当時のことを聞いて私は内心愕然とした。
“公電洩れ事件” に続く閣議での不手際で大平はすっかり慌ててしまい 外相辞任を考えたらしい。田中首相にこれを述べると
「きれいごとをいうな」
と一喝されて また辞表をひっこめたという。私は大平の弱い性格がここで暴露されたのを知って嫌な気がした。こんな時の大平は明らかに宰相の器からは程遠いものがある。
「大平は頼りがいがない。その上 情感を素直に現さない。だから同志はカベを感じて打ちこめない」
「福田は参院選後、内閣を去るだろう。党内反主流は今までナンバー２の大平を叩くことに主眼があったが これからは田中を直接叩くだろう」
私の友人の政治記者はこう教えてくれた。
私は5月11日、大平と会った。
「どうもおかしい。私は田中が大平の足をとめているような気がしてならない。『大平は弱い』という声がしきりに田中周辺から流されている。福田は閣外に出るだろう」
私は大平にこう述べたとたんにスーッとして気が安まった。大平は黙って聞いていた。

49年7月の参議院選挙は初めから自民党にとってはきわめて苦しい選挙であった。
これまでの参院選をみると自民党の得票率は37年46.4％、40年47.2％、43年46.7％、46年44.4％と下降線をたどっていた。
それに野党総体としての気勢があがっていた。ことに注目を集めたのは すべての野党がこれまではあきらめて放棄していた政権獲得に意欲をみせ始めたことである。
― 社会党は国民連合政府。
― 共産党は民主連合政府。
― 公明党は中道革新連合政府。
― 民社党は革新連合政権。
もちろん野党内部にも対立はあった。共産党に対して
春日一幸民社党委員長「共産党の本質は暴力革命、プロレタリア独裁であることに変わりはない」
矢野絢也公明党書記長「共産党はある時点での憲法改正を謳っているが その具体的な内容が不明確で協力できない」
といった対立の姿勢をとった。としても社共両党は共闘を拡大強化した。
そういった情勢をみてジャーナリズムはすでにこの一年近くにわたってしきりと
「参院選で保革逆転がありうる」と報道し続けてきた。
それだけに田中首相も橋本幹事長、竹下筆頭副幹事長も懸命に準備をすすめてきた。

「参院で保革逆転されれば法案、案件は参議院で否決される。政権の機能は麻痺し片肺飛行になる」という危機感を抱いて
― 五議席ぐらいの増加。
を目標においた。
全国区では宮田輝、山東昭子、山口淑子、斎藤栄三郎、鳩山威一郎など知名度や組織力のある候補を擁立した。
地方区でも田中は果敢な攻撃作戦をとり 二人区独占の構えさえ示した。
しかし一方では公認問題がこじれて不利とみられる選挙区が生じることはやむを得なかった。
その一つが “徳島戦争” といわれるもので現職は三木派の城代家老・久次米健太郎であった。不幸なことに党内での知名度は低かった。そこに田中派の後藤田正晴官房副長官が公認を申請した。後藤田は連合赤軍の浅間山荘事件があった時の警察庁長官で田中は彼を高く評価していた。後藤田はいずれ衆議院へ鞍替えという考えで徳島選挙区からの出馬に固執した。田中は後藤田を公認し 久次米は非公認で立つことになった。これは田中首相と三木副総理の対立を激しいものとした。
北海道では現職の西田信一、河口陽一を公認したのに対し 青嵐会の中川一郎が前道議の高橋辰夫を無所属で強引に出馬させ激烈な食い合いが行なわれた。

🎤コホン
え〜皆さんおはこんばんちは。

金持ちとお友達優遇、そして貧乏しねしね安倍自民党です！

消費税10%目指して頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。

安倍政権に関わって不審な死を遂げた人物一覧

竹中省吾裁判官
住民基本台帳で違憲判決を出した竹中省吾裁判官が自殺。

平田公認会計士
りそな銀行を監査中に自殺

鈴木啓一
朝日新聞記者　りそなの政治献金が10倍になっていることを記事にし東京湾に浮かぶ。（自殺）