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【ペン専用】SUPERNOVA(旧 超新星)★66
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佐藤は夜に予定している誕生パーティーが きわめて盛大なものになって おおいに勢威を誇示できるであろうと、そちらのほうに昂ぶった喜びを感じていた。
たしかに……その夜、公邸でもよおされたパーティーは 六百人を集めて人の波が渦を巻いた。至るところのさざめきが どよめきにちかいものになって 六百通を越えたという祝電も披露できないありさまであった。
司会役の木村武雄が千軍万馬の士にも似合わず顔を紅潮させていた。
「総理はたいへんに健康で まだまだ政権を担当できる……」
日ごろ 佐藤に率直に意見具申をしていると称する木村にしては、どうも茶坊主的発言であった。隅のほうで若手が
「木村さんも硬骨漢と思っていたがねえ、やはり総理の前では だめなんだな」
「いや、保利幹事長も総理には思っとることの半分もいえんらしいよ」
と、そんな会話をかわした。
福田赳夫外相だけが佐藤のそばについていた。挨拶のスピーチを行なった。
田中角栄通産相のほうは終始 人波のなかにまじっていた。「禅譲を期待する福田と、自力独歩の田中との相違だな」という声があった。ただ この席では前尾繁三郎法相が皮肉な挨拶をした。
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佐藤は夜に予定している誕生パーティーが きわめて盛大なものになって おおいに勢威を誇示できるであろうと、そちらのほうに昂ぶった喜びを感じていた。
たしかに……その夜、公邸でもよおされたパーティーは 六百人を集めて人の波が渦を巻いた。至るところのさざめきが どよめきにちかいものになって 六百通を越えたという祝電も披露できないありさまであった。
司会役の木村武雄が千軍万馬の士にも似合わず顔を紅潮させていた。
「総理はたいへんに健康で まだまだ政権を担当できる……」
日ごろ 佐藤に率直に意見具申をしていると称する木村にしては、どうも茶坊主的発言であった。隅のほうで若手が
「木村さんも硬骨漢と思っていたがねえ、やはり総理の前では だめなんだな」
「いや、保利幹事長も総理には思っとることの半分もいえんらしいよ」
と、そんな会話をかわした。
福田赳夫外相だけが佐藤のそばについていた。挨拶のスピーチを行なった。
田中角栄通産相のほうは終始 人波のなかにまじっていた。「禅譲を期待する福田と、自力独歩の田中との相違だな」という声があった。ただ この席では前尾繁三郎法相が皮肉な挨拶をした。
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佐藤は夜に予定している誕生パーティーが きわめて盛大なものになって おおいに勢威を誇示できるであろうと、そちらのほうに昂ぶった喜びを感じていた。
たしかに……その夜、公邸でもよおされたパーティーは 六百人を集めて人の波が渦を巻いた。至るところのさざめきが どよめきにちかいものになって 六百通を越えたという祝電も披露できないありさまであった。
司会役の木村武雄が千軍万馬の士にも似合わず顔を紅潮させていた。
「総理はたいへんに健康で まだまだ政権を担当できる……」
日ごろ 佐藤に率直に意見具申をしていると称する木村にしては、どうも茶坊主的発言であった。隅のほうで若手が
「木村さんも硬骨漢と思っていたがねえ、やはり総理の前では だめなんだな」
「いや、保利幹事長も総理には思っとることの半分もいえんらしいよ」
と、そんな会話をかわした。
福田赳夫外相だけが佐藤のそばについていた。挨拶のスピーチを行なった。
田中角栄通産相のほうは終始 人波のなかにまじっていた。「禅譲を期待する福田と、自力独歩の田中との相違だな」という声があった。ただ この席では前尾繁三郎法相が皮肉な挨拶をした。
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佐藤は夜に予定している誕生パーティーが きわめて盛大なものになって おおいに勢威を誇示できるであろうと、そちらのほうに昂ぶった喜びを感じていた。
たしかに……その夜、公邸でもよおされたパーティーは 六百人を集めて人の波が渦を巻いた。至るところのさざめきが どよめきにちかいものになって 六百通を越えたという祝電も披露できないありさまであった。
司会役の木村武雄が千軍万馬の士にも似合わず顔を紅潮させていた。
「総理はたいへんに健康で まだまだ政権を担当できる……」
日ごろ 佐藤に率直に意見具申をしていると称する木村にしては、どうも茶坊主的発言であった。隅のほうで若手が
「木村さんも硬骨漢と思っていたがねえ、やはり総理の前では だめなんだな」
「いや、保利幹事長も総理には思っとることの半分もいえんらしいよ」
と、そんな会話をかわした。
福田赳夫外相だけが佐藤のそばについていた。挨拶のスピーチを行なった。
田中角栄通産相のほうは終始 人波のなかにまじっていた。「禅譲を期待する福田と、自力独歩の田中との相違だな」という声があった。ただ この席では前尾繁三郎法相が皮肉な挨拶をした。
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「総理大臣として誕生日を八回迎えた人は 佐藤首相をおいて他にはない」
すでに政権担当記録において吉田茂を破り、第一位の桂太郎、第二位の伊藤博文に迫りつつあることを前尾はいったのだ。が、最後にこのように付け加えた。
「……おそらくこの誕生日が 総理大臣としては最後のものと思う」
それは「もう五選などされてはかなわない。できれば早期退陣を」という前尾の精いっぱいの皮肉であった。拍手が起こった。
そんな皮肉など いっこう佐藤は意に介さないもののようであった。パーティーそのものを楽しむだけでなく、この盛大さのなかに まだまだ衰えない自分の勢威を見出して それを愉しんでいるように映った。
その佐藤に渋面をこしらえさせるような事件が起こったのは……その翌28日であった。沖縄返還交渉の極秘電報が暴露されたのである。
その午前、社会党の楯兼次郎国対委員長が 横路孝弘と楢崎弥之助とを連れて記者クラブに姿をみせた。またなにか爆弾質問でも……と直感した記者も何人かいた。二人は
「沖縄返還交渉のさい 地主への補償やVOA放送について このような秘密の約束が日米間に交わされていた」と その電信の全文を発表した。
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「総理大臣として誕生日を八回迎えた人は 佐藤首相をおいて他にはない」
すでに政権担当記録において吉田茂を破り、第一位の桂太郎、第二位の伊藤博文に迫りつつあることを前尾はいったのだ。が、最後にこのように付け加えた。
「……おそらくこの誕生日が 総理大臣としては最後のものと思う」
それは「もう五選などされてはかなわない。できれば早期退陣を」という前尾の精いっぱいの皮肉であった。拍手が起こった。
そんな皮肉など いっこう佐藤は意に介さないもののようであった。パーティーそのものを楽しむだけでなく、この盛大さのなかに まだまだ衰えない自分の勢威を見出して それを愉しんでいるように映った。
その佐藤に渋面をこしらえさせるような事件が起こったのは……その翌28日であった。沖縄返還交渉の極秘電報が暴露されたのである。
その午前、社会党の楯兼次郎国対委員長が 横路孝弘と楢崎弥之助とを連れて記者クラブに姿をみせた。またなにか爆弾質問でも……と直感した記者も何人かいた。二人は
「沖縄返還交渉のさい 地主への補償やVOA放送について このような秘密の約束が日米間に交わされていた」と その電信の全文を発表した。
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「総理大臣として誕生日を八回迎えた人は 佐藤首相をおいて他にはない」
すでに政権担当記録において吉田茂を破り、第一位の桂太郎、第二位の伊藤博文に迫りつつあることを前尾はいったのだ。が、最後にこのように付け加えた。
「……おそらくこの誕生日が 総理大臣としては最後のものと思う」
それは「もう五選などされてはかなわない。できれば早期退陣を」という前尾の精いっぱいの皮肉であった。拍手が起こった。
そんな皮肉など いっこう佐藤は意に介さないもののようであった。パーティーそのものを楽しむだけでなく、この盛大さのなかに まだまだ衰えない自分の勢威を見出して それを愉しんでいるように映った。
その佐藤に渋面をこしらえさせるような事件が起こったのは……その翌28日であった。沖縄返還交渉の極秘電報が暴露されたのである。
その午前、社会党の楯兼次郎国対委員長が 横路孝弘と楢崎弥之助とを連れて記者クラブに姿をみせた。またなにか爆弾質問でも……と直感した記者も何人かいた。二人は
「沖縄返還交渉のさい 地主への補償やVOA放送について このような秘密の約束が日米間に交わされていた」と その電信の全文を発表した。
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「総理大臣として誕生日を八回迎えた人は 佐藤首相をおいて他にはない」
すでに政権担当記録において吉田茂を破り、第一位の桂太郎、第二位の伊藤博文に迫りつつあることを前尾はいったのだ。が、最後にこのように付け加えた。
「……おそらくこの誕生日が 総理大臣としては最後のものと思う」
それは「もう五選などされてはかなわない。できれば早期退陣を」という前尾の精いっぱいの皮肉であった。拍手が起こった。
そんな皮肉など いっこう佐藤は意に介さないもののようであった。パーティーそのものを楽しむだけでなく、この盛大さのなかに まだまだ衰えない自分の勢威を見出して それを愉しんでいるように映った。
その佐藤に渋面をこしらえさせるような事件が起こったのは……その翌28日であった。沖縄返還交渉の極秘電報が暴露されたのである。
その午前、社会党の楯兼次郎国対委員長が 横路孝弘と楢崎弥之助とを連れて記者クラブに姿をみせた。またなにか爆弾質問でも……と直感した記者も何人かいた。二人は
「沖縄返還交渉のさい 地主への補償やVOA放送について このような秘密の約束が日米間に交わされていた」と その電信の全文を発表した。
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「総理大臣として誕生日を八回迎えた人は 佐藤首相をおいて他にはない」
すでに政権担当記録において吉田茂を破り、第一位の桂太郎、第二位の伊藤博文に迫りつつあることを前尾はいったのだ。が、最後にこのように付け加えた。
「……おそらくこの誕生日が 総理大臣としては最後のものと思う」
それは「もう五選などされてはかなわない。
できれば早期退陣を」という前尾の精いっぱいの皮肉であった。拍手が起こった。
そんな皮肉など いっこう佐藤は意に介さないもののようであった。パーティーそのものを楽しむだけでなく、この盛大さのなかに まだまだ衰えない自分の勢威を見出して それを愉しんでいるように映った。
その佐藤に渋面をこしらえさせるような事件が起こったのは……その翌28日であった。沖縄返還交渉の極秘電報が暴露されたのである。
その午前、社会党の楯兼次郎国対委員長が 横路孝弘と楢崎弥之助とを連れて記者クラブに姿をみせた。またなにか爆弾質問でも……と直感した記者も何人かいた。二人は
「沖縄返還交渉のさい 地主への補償やVOA放送について このような秘密の約束が日米間に交わされていた」と その電信の全文を発表した。
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「総理大臣として誕生日を八回迎えた人は 佐藤首相をおいて他にはない」
すでに政権担当記録において吉田茂を破り、第一位の桂太郎、第二位の伊藤博文に迫りつつあることを前尾はいったのだ。が、最後にこのように付け加えた。
「……おそらくこの誕生日が 総理大臣としては最後のものと思う」
それは「もう五選などされてはかなわない。
できれば早期退陣を」という前尾の精いっぱいの皮肉であった。拍手が起こった。
そんな皮肉など いっこう佐藤は意に介さないもののようであった。パーティーそのものを楽しむだけでなく、この盛大さのなかに まだまだ衰えない自分の勢威を見出して それを愉しんでいるように映った。
その佐藤に渋面をこしらえさせるような事件が起こったのは……その翌28日であった。沖縄返還交渉の極秘電報が暴露されたのである。
その午前、社会党の楯兼次郎国対委員長が 横路孝弘と楢崎弥之助とを連れて記者クラブに姿をみせた。またなにか爆弾質問でも……と直感した記者も何人かいた。二人は
「沖縄返還交渉のさい 地主への補償やVOA放送について このような秘密の約束が日米間に交わされていた」と その電信の全文を発表した。
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