238 【小説】「愛の蹉跌」=第24回= それから2ヶ月後のこと。・・・佐山治に対する判決公判が横浜地方裁判所の法廷で開かれた。(裁判長)『では開廷します。被告人、前へ。』 手錠を外された佐山治は裁判長の正面に立つ。(裁判長)『佐山治に対する殺人被告事件について判決を言い渡す。主文、被告人を懲役5年から7年に処する。以上です。』 少年事件の場合、○年から○年と幅をもたせた刑が言い渡される。これを不定期刑という。刑務所で問題を起こさずに、ちゃんと懲役に励めば5年で出てこれるであろう。 匿名さん2012/10/06 18:13
239 いくら少年とはいえ、18歳である。普通は、すでに判断力や理性を十分持ち合わせている年齢であろう。なのに、未成年というだけで、人を殺しても、たった5年から7年の刑である。いくらなんでも軽過ぎはしないか?・・・佐山治は思わずガッツポーズを見せる。弁護人の亀田静歌も満足な表情で頷く。判決内容を知った岡野芙美江の父は、横浜地検に東京高等裁判所への控訴を強く懇願した。しかし、地裁での審理経過を鑑みると、高裁での逆転はまず不可能と判断。 匿名さん2012/10/06 18:13
240 控訴を断念する旨、検察官から岡野芙美江の父に伝えられた。さらに、芙美江の父は、佐山治の両親に対し、民事で損害賠償請求訴訟を起こしたいと横浜市内の法律事務所を訪れ弁護士に相談をした。佐山治本人のみならず、彼の両親も、被害者遺族に対する謝罪は無ければ、被害賠償もまったく無い。弁護士は、『佐山治の両親の、治に対する親権者としての監督義務違反を理由に勝訴する可能性はある。』『しかし、佐山家が三重県で経営する零細企業は、現在、経営難である。 匿名さん2012/10/06 18:14
241 治の父名義の不動産には、銀行の抵当権が目いっぱいついている。』『なので、仮に勝訴したとしても、治の両親から賠償金を取ることはほぼ不可能だ。』『したがって、悔しい気持ちはよくわかるが、民事訴訟の提起を断念するのが妥当だと思う。』と芙美江の父にアドバイスした。結局、犯罪者は少年法で厚く保護され、被害者への賠償などしなくても何もぺナルティーを科されずじまい。こんな理不尽な話があるだろうか?それが通用してしまう先進国(?)日本である。犯罪被害者とその遺族を取り巻く冷徹な現実、「悲劇」がそこにあった。 匿名さん2012/10/06 18:14
242 その後、岡野芙美江の父は、最愛の妻を失った悲しみから、酒に溺れるようになっていく。そして、会社を辞め、自宅で引きこもりがちに。事件現場となった鶴見のマンションは、ローン返済の目処が立たなくなったことから売却した。岡野芙美江も、引きこもりで精神を病んだ父と家計を支えるため仕事についた。そう、経済苦から高校進学を断念せざるを得なかったのだ。まだ15歳、16歳の芙美江であったが、世間は情け容赦はしない。芙美江は、その後、厳しい社会の荒波に翻弄されていくこととなる。 匿名さん2012/10/06 18:15
243 そして、芙美江の父は、それからしばらくして肝臓を患い死去。そう、犯罪者・佐山治の手により、岡野家は崩壊したのだ。一方、佐山治は、23歳で刑務所を出所。それからも定職につかず、新宿歌舞伎町のテキヤ系暴力団‘極西会’の準構成員(チンピラ)となる。そして、恐喝、覚せい剤取締法違反(所持)、詐欺、売春防止法違反などで度々警察に逮捕され、文字通り、刑務所を出たり入ったりの人生となっていった。もはやコメントは不要であろう。 匿名さん2012/10/06 18:15
244 三重県の少ねん院や18歳で服役した刑務所の矯正「教育」などという甘っちょろい小手先の手法で、佐山治の犯罪性向を変えることなど所詮は無理な相談だったのである。・・・・「警部!会議の時間ですが?」 品川湾岸警察署4階の資料室で、佐山治が27年前に犯した殺人事件記録を読みふけっていた大崎刑事。その大崎に若い部下が声をかけた。(大崎)『あ、ああ、そうだ。今日は全体会議だったね。』(若手刑事)「ええ。署長が既に着席していますよ。」 匿名さん2012/10/06 18:16
245 (大崎)『おお、それはまずい。早くいかないと。今すぐ行くよ!』 会議の後は?...安羅木(やすらぎ)の取調べだな。それが終わったあとでまた記録の続きを読もう。大崎刑事は、安羅木が稼働していた吉原エンペラーから押収した書類一式の上に分厚い記録簿を置いた。・・・・(次回に続く) 匿名さん2012/10/06 18:16
247 【小説】「愛の蹉跌」=第25回= 大崎刑事は、品川湾岸警察署5階の大会議室に入った。なんと署長の真向かいの席である。大崎は、思わず溜め息がもれる。大崎より年下の署長は、いつも「警察のメンツ」ばかり。自己保身と出世しか考えない男だ。本人は、時代劇で有名な俳優‘高橋○樹’似のイケメン男を気取るが、「は?どこがだよ!」と大崎も他の部下達もみんな署長を毛嫌いしていた。しかし、警視正である署長は人事評価権者だ。彼に嫌われると、出世は絶たれる。 匿名さん2012/10/18 01:54