290 285つづき その日に限らず、週末となればそれぞれの海の家でクラブイベントがあちこちで開催され、朝方に泥酔者が彷徨いたり、浜辺で裸でごろ寝していたり、そんな風景に慣れていたのもあり、取り分け気にするでもなく三度寝にふけった私は、開店時間を過ぎてスタッフやお客の賑やかな話し声で目を覚ましました。 深夜に子連れで来た親子もすっかり起きていて、事の顛末を話して皆で笑っていたとき、私は朝方の訪問者について語り出しました。 つづく 主2021/06/08 21:274FkqoEEBMI
291 290つづき 「白地に緑の柄が入ったジャンパー着た奴うろついてたんだよ…どこの客だろう、うちでは見たことない」 こんな感じで話をしていたら、座敷で横になっていた、元々この店を経営していた年配の雇われ店長のGさんが、急に飛び起きて「おまえ、それ何時頃よ?」Gさんは目を見開いて、それは驚いた顔をしながら言うのです。 私は「いや、だから朝方4時ぐらいだと思うよ…」こう答えると、Gさんは「それ、本当に見たのかっ?」かなり強い口調で言うので、私も怪訝に思い「Gさん、どうしたの?知り合いかい?」こう切り返すと彼は「おう…心当たりあるんだ…」 そしてGさんから聞いた、その人物であろう人の素性を聞いて、朝だと言うのにその場にいた全員は震え上がることになったのです。 つづく 主2021/06/08 21:28
292 291のつづき Gさんの口から語られた話はこうでした…。 Gさんがその店の現役オーナーだったころ、街の繁華街で朝まで飲んでそのまま酔った勢いで、早朝に店に来た常連客がいたのだそうです。 海までどうやって来たかは、知りませんが、その当時は今ほど飲酒運転にうるさくはなく、もしかすると自分で運転してきたのかも知れません。 とにかく、その客はあろうことか、酒にかなり酔った状態で海に入って泳いでしまい、そのまま行方不明状態になったそうです。 当然、大騒ぎとなり、海上保安庁に助けを求めることになったそうです。 事態は最悪の結果となり、会場保安庁のヘリコプターが、沖合いで浮かんでいるその客を発見し、連絡を受けたGさん達海の家スタッフが数人でマリンジェットで現場に向かい、Gさん達が遺体を引き上げ岸まで運んだそうです。 つづく 主2021/06/08 21:394FkqoEEBMI
293 292つづき Gさん曰く、その常連客はいつも海に来るときは、トレードマークさながらに「白地に緑のカミナリのような柄」のジャンパーを着ていたそうです…。「あいつまだここに来てるんだな…」こう呟いたGさんの言葉にその場にいた一同が、シーンとなったのを忘れません。 この店で起きた全ての不可解な現象とそのジャンパーの人物との因果関係が全て紐ついているかは分かりません。 しかし、この海の家での話はすべて事実です。 もちろん解釈は読んだ方の自由ですが、あまりにもたくさんの知人友人がこの店にかかわり、この話を知る人も決して少なくありません。 親しいオーナーが営む他の海の家でも、似たようなことはあると聞きます。そのオーナーの店のトイレ前の通路には、小さな男の子がよく見かけられ、誰の子かまったく分からないのだとか…。 何れにせよ、海難事故がなくなるよう心から祈るばかりです。 次回の話につづく 主2021/06/08 21:564FkqoEEBMI