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黄色一色に染まるスタンドもろとも、強烈なダメージを与えた。坂本が豪快な一発で、猛追する虎を突き放した。「1点差になった直後に、打てたことが大きい」。4―3の8回1死。フルカウントから4試合ぶりの左越え11号ソロを放った。1点差に迫られた7回裏、ポレダの降板とともに「蛍の光」の大合唱を始めた右翼席。背番号6がダイヤモンドを一周すると、その声はすっかり静まりかえっていた。
前夜の悪夢を消し去った。惜敗した9日の同カード、同点の9回2死三塁、追い込まれてから呉昇桓の直球に詰まらされて中飛に倒れた。勝負を分けたのは初球、低めの150キロストレートをファウルにしたことだった。「追い込まれたら、変化球も頭に入れながらになる。甘かった初球がすべてだね」。一夜明け、試合の終盤で値千金弾。「しっかりとボールに入っていって、うまく打つことができました」。阿部とのアベック弾は5月26日の西武戦(郡山)以来、今季2発目だった。
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忘れられないシーンがある。2年目の08年。初の全試合出場でリーグ優勝に貢献し、初体験した“ビールかけ”だ。「自分はソーダ水でした」。19歳10か月だったため、「ビールをかけないで下さい」と書かれたタスキをかけ、口には「×」マークのついたマスクをつけた。会場の隅にいた自分のもとに、次々と先輩ナインが炭酸水をかけに来てくれたことが、うれしくてたまらなかった。
あれから7年、阿部から主将の座を継承した。立場は180度変わり、頼れる先輩や後輩と歓喜の瞬間を味わいたい、その一念しかない。この日は7回の守備でショートの定位置から2度マウンドに行き、後輩の宮国を励ました。8回の攻撃が始まる前には、前を打つ片岡に「二人で打ちましょう」と約束。自ら有言実行のホームランを打ち、ベンチ裏では笑顔でハイタッチを交わした。
「これからは一試合一試合、一勝一勝すべてが大事」と坂本。若きキャプテンが、逆転Vの扉をこじ開ける。
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実に見事な、そして効果的なビッグアーチだった。1点差に迫られた直後、8回に飛び出した坂本の11号ソロだ。表情一つ変えることなくダイヤモンドを一周した。その後ろ姿からは「俺についてこい」と言わんばかりのオーラが漂っていた。
今季から主将に就任した。と言ってもまだ、26歳である。阿部、村田、長野と主力選手は軒並み年上。昨年までキャプテンだった慎之助のようにはうまくいかないはず。坂本が音頭を取って、選手だけでミーティングを行ったのは、勝ち星が伸びなかった交流戦期間中だけだ。「ミーティングをやろうというタイミングを計るのは、本当に難しいですね。僕自身、人前で話すのも決して得意ではないですし」と苦笑いしていた。
でも、それでいいと思う。野球に対しては真面目で、ストイックで、一生懸命。最近は年下の1軍選手も増えてきた。先輩にも、後輩にもその姿を見せるだけで、みんなが尊敬し、信頼するはずだ。
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何より、普通の26歳では得られないような経験値がある。「僕が入団してから去年までの8年間で6回、優勝できているんです。1年目の07年はファームも優勝した。ものすごくいい経験をさせてもらってますよ」と胸を張る。2年目にレギュラーを獲得し、シーズン終盤はドキドキの毎日を送るのが当たり前のプロ生活。だから、大混戦の現状も「今年は首位じゃないけど、いつもこの時期は競ったゲーム差で戦っている。気持ちは例年と変わらないですよ」とサラリと言ってのける。
阿部とは違うキャプテンかもしれない。でも、その堂々とした振る舞いは、チームメートを首脳陣を、そしてファンを安心させてくれる。先代の主将が2戦連発弾を放って、新キャプテンがトドメの一撃。最後までバタバタしたけど、4連覇に望みをつないだ。勇人が掲げる旗の下、今こそ、チームが一丸になる時だ。
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巨人の坂本勇人内野手(26)が11日、8月度の「月間アットホームヒーロー賞」に選出された。
この賞は、ジャイアンツオフィシャルスポンサーのアットホーム株式会社が、巨人の主催試合でヒーローインタビューを受けた全選手を表彰し、その中で最も活躍した選手をファン投票で選ぶもの。坂本の受賞対象試合は、8月1日の中日戦(東京D)。1点を追う9回1死満塁から左中間へ逆転サヨナラ二塁打を放った活躍がファンの心を打った。
移動日だったこの日、大阪から帰京した坂本は球団広報を通じてコメントを発表。「チームが4連勝中ということもあってチーム全員がこのまま終わらないという雰囲気がありました。みんながいい場面で回してくれたので自分が決めるんだという気持ちで初球から思い切っていった結果、最高の形になってくれました。球場の雰囲気も最高潮でしたし、ここで打たないといけないというプレッシャーはありましたが、声援が後押ししてくれました。ファンの皆さんの声援が選手に大きな力を与えてくれます。シーズン最後まで変わらぬご声援をよろしくお願いします」と決意を新たにした。
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3度目の正直だった。坂本が、重苦しい雰囲気を一掃した。1―0の7回1死一、三塁。井納の内角高め直球を、詰まりながら左前に運んだ。2回以来となる貴重な追加点。直前の片岡も初球を打ち上げ二飛だっただけに価値は大きい。「チャンスで2度凡退していたので、どんな形でも走者をかえしたかった。いい詰まりでした」。執念の一振りで、前の2打席の借りを返した。
序盤から何度も好機で中軸に回った。初回1死一、二塁は阿部、長野、3回1死二塁は坂本、阿部が凡退。5回1死二塁は坂本が左邪飛、阿部四球、長野が初球で二飛。6回まで7残塁で迎えた7回、坂本は「絶好機。思い切り振った」と雪辱した。3、4、5番が得点圏で計9打数1安打に終わっただけに、自身4試合連続打点となる一打で、何とかクリーンアップの面目を保った。
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詰まってもヒットゾーンに飛ぶのは、練習の成果だ。ティー打撃では、実際より捕手寄りの球を打つ練習を徹底。引きつけて打つ感覚を養った。その結果、球の見極めも向上。昨年まで55が最多だった四球が65に増えた。以前「自分は四球が少ない」と口にしていたが、出塁率も09年の自己最高3割5分7厘を上回る3割7分5厘。低調な打線の中、貢献度は高い。
負けられない試合が続くが、グラウンド上の振る舞いは重圧を全く感じさせない。攻守で躍動する姿は、野球を楽しんでいるようにすら見える。「絶対に優勝したい」という頼もしい主将の一打が、チームに勇気を与えた。
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空路で広島に移動し、フリー打撃では鋭い打球を連発した。ジョンソンとは通算6打数2安打と、でチーム唯一の複数安打を放っている。「しっかりとやっていきたいです」
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巨人の坂本勇人内野手(26)が17日、一撃必殺のライアン撃ちを宣言した。18日のヤクルト戦(神宮)で激突する小川泰弘投手(25)とは通算31打数7安打ながら、4本塁打に2二塁打。長打か凡打のフルスイングで攻略する決意だ。
坂本がライアンと相まみえるたび、スタンドには両軍の歓声と悲鳴が交錯する。18日のヤクルト先発・小川とは3年間で、通算31打数7安打。打率は2割2分6厘ながら、ヒットの内訳は4本塁打、2二塁打、1単打。凡打でなければ「狙ってないですし、理由は分からないです」と不思議と長打が飛び出す。2ゲーム差で追う首位のツバメに再び、大ダメージを与える決意だ。
今季も節目のアーチをかけてきた。5月15日、小川から東京Dの左中間に1号2ランを突き刺した。記憶に新しい今月2日、金沢の地で放った左越え10号2ラン。プロ3年目となる2009年から7年連続2ケタ本塁打をマークしたのもライアンからだった。「2本目は風が強かったので」と本人は冷静だが、オール・オア・ナッシングの精神で一発を放つつもりだ。
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この日はG球場の室内で全体練習。各自がテーマを持ち、フリー打撃などで汗を流した。今季、ヤクルトとは10勝10敗。坂本は「緊張感を持ってやっていきたいです」と気合十分。チーム打率は12球団ワーストの2割4分3厘でなかなか浮上のきっかけをつかめないが、残りは13試合で考えている暇はない。主将の一振りから、逆転優勝の扉をこじ開ける。
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